鉄道の乗りつぶしを始めると、盲腸線が気になってくる。盲腸線とは、行き止まりとなる路線のことである。往復すると効率が悪いし、後回しにするといつか再訪しなければならない。乗り鉄の世界では、これを落穂拾い(おちぼひろい)と称している。
そこで、行き止まりの駅からバスを利用できないかと考えることになる。このように、盲腸線の行き止まり駅から他の路線の駅にバスで移動することを、乗り鉄の世界では「ワープする」と称している。特に、盲腸線の行き止まり駅同士をワープすればふたつの盲腸線を続けて完乗することができる。
単に鉄道の駅と駅を接続する路線はあちこちに存在する。しかし、少なくとも一方の駅が盲腸線の行き止まり駅である場合となると、かなりしぼられる。特に、盲腸線の行き止まり駅同士を接続する場合となると更に限られる。
かつて、国鉄時代には多くの盲腸線が存在したので、盲腸線の行き止まり駅同士を接続する路線バスも多く存在した。盲腸線が次々と廃止された今は、どのような状況であろうか。
次なる条件に該当するワープ路線を探してみた。
①路線バスで行き止まり駅同士を結ぶ
そこで、行き止まりの駅からバスを利用できないかと考えることになる。このように、盲腸線の行き止まり駅から他の路線の駅にバスで移動することを、乗り鉄の世界では「ワープする」と称している。特に、盲腸線の行き止まり駅同士をワープすればふたつの盲腸線を続けて完乗することができる。
ワープ路線における交通手段は、バスだけとは限らず、徒歩もありえる。2020年5月7日に廃止された新十津川(しんとつかわ)駅は札沼(さっしょう)線の行き止まり駅であった。新十津川(しんとつかわ)駅で下車したのちに、バスで函館本線の滝川(たきかわ)駅に行くことができた。私は、1997年頃に、その区間を歩いてワープしたことがある。所要時間は約1時間であった。Google Map(グーグルマップ)アプリなど無かった時代である。滝川(たきかわ)で乗車する予定の列車に間に合うかどうか心配であったが、問題無く到着した。
かつて、国鉄時代には多くの盲腸線が存在したので、盲腸線の行き止まり駅同士を接続する路線バスも多く存在した。盲腸線が次々と廃止された今は、どのような状況であろうか。
次なる条件に該当するワープ路線を探してみた。
①路線バスで行き止まり駅同士を結ぶ
②行き止まり駅の同一構内に他の鉄道路線が存在しない
③バスを2台以上乗り継がない
④所要時間が鉄道経由よりも短い
⑤路線バスの途中に他の鉄道路線の最寄りバス停が存在しない
⑥行き止まり駅同士が至近距離でない(徒歩15分以上)
⑤路線バスの途中に他の鉄道路線の最寄りバス停が存在しない
⑥行き止まり駅同士が至近距離でない(徒歩15分以上)
⑦高速バスとBRT(Bus Rapid Transit、バス高速輸送システム)を含めない
⑧ケーブルカーやロープウエー、リフトの駅を行き止まり駅には含めない
⑧ケーブルカーやロープウエー、リフトの駅を行き止まり駅には含めない
この条件に合致する路線バスを探したところ、次なる6路線を見つけた。
(1) 間藤(まとう)駅前~東武日光駅
「わたらせ渓谷鐵道(けいこくてつどう)」は、桐生(きりゅう)駅から間藤(まとう)駅までの路線であり、国鉄時代は足尾(あしお)線と呼ばれていた。この「わたらせ渓谷鐵道(けいこくてつどう)」の間藤(まとう)駅は、紀行作家である宮脇俊三(しゅんぞう)が、国鉄全線完乗を成し遂げた駅である。彼は、その全行程を紀行文として、「時刻表2万キロ」(1978年)を著した。これが彼の作家としてのデビュー作である。「時刻表2万キロ」は「乗り鉄のバイブル」と言われている。そうすると、間藤(まとう)駅は「乗り鉄の聖地」であろうか。
なお、「わたらせけいこくてつどう」の正式表記は、次の通りである。
【正】わたらせ渓谷鐵道
【誤】わたらせ渓谷鐡道
【誤】わたらせ渓谷鉄道
また、「JR日光駅~東武日光駅」間も盲腸線の行き止まり駅同士を結ぶ路線バスであるが、徒歩4分という至近距離であり、この記事で定めた条件⑥を満たしていない。
(2) 「金沢駅~野町(のまち)」と「金沢駅西口~野町(のまち)駅」
北鉄金沢駅は、金沢駅の至近距離にあるのだが「同一の駅である」とは言いがたく、北陸鉄道浅野川線の行き止まり駅である。また、野町(のまち)駅は北陸鉄道石川線の行き止まり駅である。そうすると、北鉄金沢駅と野町(のまち)駅の間は行き止まり駅同士ということになる。
金沢駅の東口に「金沢駅」というバス停がある。また、金沢駅の西口に「金沢駅西口」というバス停があり、北鉄金沢駅から徒歩5分である。
野町(のまち)駅の駅前に、「野町(のまち)駅」というバス停がある。野町(のまち)駅から徒歩3分の場所に「野町(のまち)」というバス停がある。
「金沢駅」だけでなく「金沢駅西口」も北鉄金沢駅の最寄りバス停であると考えると、「金沢駅西口~野町(のまち)駅」間もワープ路線である。
「野町(のまち)駅」だけでなく「野町(のまち)」も野町(のまち)駅の最寄りバス停であると考えると、「金沢駅~野町(のまち)」間はワープ路線であるということになる。
(3) 「千里(せんり)中央~阪急北千里(きたせんり)駅」と「千里(せんり)中央~阪急箕面(みのお)駅」
「千里(せんり)中央~
阪急北千里(きたせんり)駅」と
「千里(せんり)中央~
阪急箕面(みのお)駅」
北大阪急行の千里(せんり)中央駅は、大阪モノレールの千里(せんり)中央駅の至近距離にあるのだが「同一の駅である」とは言いがたく、北大阪急行の行き止まり駅である。また、阪急箕面(みのお)線の箕面(みのお)駅と阪急千里(せんり)線の北千里(きたせんり)駅はいずれも行き止まり駅である。そうすると、北大阪急行の千里(せんり)中央駅と阪急箕面(みのお)線の箕面(みのお)駅の間、および北大阪急行の千里(せんり)中央駅と阪急千里(せんり)線の北千里(きたせんり)駅の間は行き止まり駅同士ということになる。
「千里(せんり)中央~阪急北千里(きたせんり)駅」間の所要時間については、鉄道経由の場合よりも短い経路とそうでない経路がある。「千里(せんり)中央~阪急箕面(みのお)駅」間の所要時間については、鉄道経由よりも短い。
(4) 河和(かわわ)駅~内海(うつみ)駅
名鉄の河和(かわわ)駅は河和(かわわ)線の行き止まり駅であり、同じく内海(うつみ)駅は知多(ちた)新線の行き止まり駅である。
(5) 清輝橋(せいきばし)~宇野(うの)駅
(6) 宿毛(すくも)駅~宇和島(うわじま)駅前
宿毛(すくも)駅~
宇和島(うわじま)駅前
宿毛(すくも)駅は土佐くろしお鉄道の行き止まり駅であり、宇和島(うわじま)駅は予讃(よさん)線の行き止まり駅である。
土佐くろしお鉄道の「若井~荷稲(かいな)」間は、ループ線があることで有名である。
<追記>
この記事を閲覧したテツ人から、JRバス関東の「芝山千代田(しばやまちよだ)駅~成田空港第1旅客(りょかく)ターミナル」間の存在が提案された。確かに、そのバス路線は存在するのだが、残念ながら、双方のバス停に停車する便(びん)が存在しない。したがって、この記事で定めた条件④を満たしていない。
<補足>
「京王八王子駅~武蔵五日市(むさしいつかいち)駅」間の路線バスは、盲腸線の行き止まり駅同士であるのだが、途中に、八王子駅の最寄りバス停である「八王子駅北口」が存在するので、この記事で定めた条件⑤を満たしていない。
「上北台(かみきただい)駅~西武球場前駅」間の路線バスは、西武球場前駅が西武狭山線と西武山口線の接続駅なので西武球場前駅が行き止まり駅ではなく、この記事で定めた条件①を満たしていない。
「浦賀(うらが)駅~JR久里浜(くりはま)駅」間の路線バスは、盲腸線の行き止まり駅同士を結んでいるのだが、途中に「京急久里浜(くりはま)駅」というバス停があるので、この記事で定めた条件⑤を満たしていない。しかし、ワープ路線として有益であるように感じられる。
「三崎口~逗子・葉山駅(南口)」間の路線バスは、盲腸線の行き止まり駅同士を結んでいるのだが、途中に長井(ながい)というバス停があって、そこで乗り継がなければならないので、この記事で定めた条件③を満たしていない。また、所要時間が鉄道経由よりも長いので、この記事で定めた条件④も満たしていない。
「片瀬江ノ島(かたせえのしま)駅~湘南江ノ島(しょうなんえのしま)駅」間の路線バスは、盲腸線の行き止まり駅同士であるのだが、途中に、江ノ島(えのしま)電鉄江ノ島(えのしま)駅の最寄りバス停である「江ノ島(えのしま)駅」が存在するので、この記事で定めた条件⑤を満たしていない。しかし、ワープ路線として有益であるように感じられる。