鉄道の乗りつぶしを始めると、乗りつぶし対象を定義しなければならないことに気付く。ウィキペディアによると、鉄道の定義は、次のとおりである。
【鉄道とは、レールを敷いて、その上に列車を走らせ、人や貨物を運ぶ陸上交通機関である。】
その分類方法はいくつかあるが、技術的な分類では次のとおりである。
(1) 普通鉄道
これは、一般的に「鉄道」と呼ばれるものである。
(2) 特殊鉄道
これは、「普通鉄道」以外の鉄道である。これを細分すると、次のとおりである。
① 歯軌条鉄道
これは、ラック式鉄道とも言われ、ラックとピニオンで急勾配を登る鉄道である。国内では、公共交通としては大井川鐵道(おおいがわてつどう)のみであり、他に遊覧鉄道として4か所存在する。
② 単軌条鉄道
これは、いわゆるモノレールのことである。
③ 案内軌条鉄道
これは、いわゆる新交通システムのことである。案内用のレールがあるが、車体をささえて走行するのはゴムタイヤである。国内では、「ゆりかもめ」や「日暮里・舎人ライナー」などが該当する。一般乗客は気付かないが、札幌市営地下鉄も新交通システムである。
④ 鋼索鉄道
これは、いわゆるケーブルカーのことである。
⑤ 索道
これは、いわゆるロープウエーやリフトのことである。
⑥ 無軌条電車
これは、いわゆるトロリーバスである。国内では立山トンネルトロリーバスのみである。
⑦ 磁気浮上式鉄道
これは、いわゆるリニアモーターカーである。リニア新幹線が有名であるが、都営地下鉄大江戸線や大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地(ながほりつるみりょくち)線など、最近はあちこちの地下鉄が採用している。
この分類の中で、(1)の普通鉄道については、公共交通に限れば、目標を定めやすいのだが、公共交通以外の普通鉄道すなわち遊覧鉄道についても乗りたくなってくる。遊覧鉄道については、その線引きが難しい。雨宮森林鉄道(北海道遠軽町(えんがるちょう))や門司港レトロ観光線(福岡県北九州市)を問題視することはないのだが、遊園地にある子供汽車や公園の空き地に一時的に敷設されるミニ列車(またいで座るタイプ)については、大人がひとりで乗車するには気が引ける。後者は除外すると決めることはできるのだが、前者と後者の中間タイプが悩みとなる。東京ディズニーランドにウェスタンリバー鉄道というのがある。未乗路線であるが、乗ってみたいようなどうでもいいような微妙な印象である。
②の単軌条鉄道(すなわちモノレール)、③の案内軌条鉄道(すなわち新交通システム)、および④の鋼索鉄道(すなわちケーブルカー)については、そのいずれに含まれるのか判別しづらい乗り物がある。それは、スロープカーや斜行エレベータである。モノレールや新交通システム、ケーブルカーと同じであれば、乗り鉄としては見過ごせない。斜行エレベータは、観光施設アクセスだけでなく新興住宅アクセスやバリアフリーアクセスとして設置されることが多い。平日の昼間に新興住宅地に設置された斜行エレベータに乗ると、同乗者から、不審者を見る眼を向けられる。もちろん、そのような視線を気にするようでは乗り鉄失格である。
斜行エレベータに乗ってみて、車窓などに感激するタイプもあれば、オフィスビルの垂直エレベータと何ら変わりないという心折れるタイプもある。例えば、多摩ニュータウンにも斜行エレベータがある。私は、現役時代に東京都立大学に行くことが多かったが、その途中にある京王堀之内駅で下車して、駅前にある斜行エレベータに乗ったことがある。それは心折れるタイプであった。
斜行エレベータが鉄道であるとすると、垂直エレベーターは鉄道ではないのであろうか。垂直エレベータにもレールは存在する。垂直エレベータは駅のホームにも存在するが、オフィスビルやマンションにも存在する。趣味目的でオフィスビルやマンションのエレベータに乗ろうとすると不法侵入に該当する可能性がある。したがって、私は、垂直エレベータについては、乗りつぶし対象から除外している。しかし、観光名所へのアクセス手段として設置されている垂直エレベータについては、なるべく乗ることにしている。
次に、⑤の索道(すなわちロープウエーやリフト)である。リフトは、スキー場に多く存在する。スキー場にはリフト以外にも、滑走型索道というものがある。滑走型索道の中でTバーやJバーと言われているものは、利用者がスキー板を装着したまま列車の吊り革のようなものをつかんで、ロープで引っ張ってもらう方式である。滑走型索道の中でロープトゥと言われているものは、吊り革に相当する物が無く、ロープの好きな場所をつかむ方式である。これらはいずれも索道であり、すなわち鉄道である。私は、スキー場にある冬季限定運行の索道(すなわちロープウエー、ゴンドラ、リフト、Tバー、Jバー、ロープトゥ)は乗りつぶしの対象にせず、冬季以外に運行されているものについては、(乗りつぶしの対象にはしていないが、)できる限り乗ることにしている。
さて、この他に、「動く歩道」は鉄道であろうか。斜行タイプのもの(エスカレータ)もあれば水平タイプのもの(東京駅京葉線連絡通路や新宿副都心4号街路地下道など)もある。滑走型索道(Tバー、Jバー、ロープトゥ)に比べると、「動く歩道」のほうがはるかに鉄道感が強い。心ゆさぶられるカテゴリーである。私は、「動く歩道」は乗りつぶし対象とはしないが、なるべく乗るようにしている。