乗り鉄の悩み!通過可能型スイッチバック

2020年12月3日(木)


    鉄道の乗りつぶしを始めると、通過可能型スイッチバックが気になってくる。

    スイッチバックを大別すると、次の二(ふた)とおりがある。

(ア)  通過不可能型

    これは、路線を乗りつぶせば遭遇する停車場であり、未乗区間が残ることにはならない。通過不可能型スイッチバック停車場は、国内に4か所存在するのだが、私は全線完乗したので、当然のことであるがいずれも体験済みである。
①  出雲坂根(いずもさかね)駅(島根県奥出雲町(おくいずもちょう))
②  立野(たての)駅(熊本県南阿蘇村(みなみあそむら))
③  大畑(おこば)駅(熊本県人吉市(ひとよしし))
④  矢岳(やたけ)駅(宮崎県えびの市)

通過不可能型スイッチバック

(イ)  通過可能型

    これについては、予備知識無く漫然と乗りつぶすだけではその存在に気付かず、未乗区間を残してしまうことになりかねない。下図の場合、通過列車に乗車してしまうと、赤色部分が未乗となる。

通過可能型スイッチバック

    なお、ウィキペディアではスイッチバックの分類において、「◯◯型」ではなく「◯◯形」という表現を使用しているが、「◯◯型」という表現を使用すべきである。
【◯◯形】形状が似ている場合
  【例】ヒト形のロボット
【◯◯型】様式や方法が似ている場合
  【例】欧米型の考え方
    「通過可能性」は、具体的な物体ではなく、抽象的な概念なので、「◯◯型」という表現が適切である。
    また、ウィキペディアでは、上述の2種類(「通過不可能形」と「通過可能形」)の他に、「折り返し形」と「終着駅形」の計4種類に分類しているが、通過の可否で分類すると、全てのスイッチバックはその両者(「通過不可能型」と「通過可能型」)のいずれかに属する。したがって、4種類に分類することは不適切である。「折り返し形」は「通過不可能型」に、「終着駅形」は「通過可能型」に含めるべきである。

    鉄道の停車場は、次の2種類に大別される。
(a)  駅・・・旅客(りょかく)の乗降または貨物の入出荷を伴う
(b)  信号場・・・旅客(りょかく)の乗降も貨物の入出荷も伴わない

    通過可能型スイッチバック停車場は、通過列車(特急など)がスイッチバックせずに走行することができる配線を備えた停車場であり、ここを乗りつぶすには、この停車場に停車する列車(普通列車など)に乗車しなければならない。
    国内に存在する通過可能型スイッチバック停車場のうち、旅客(りょかく)列車が停車する停車場は次のとおりである。

①  二本木(にほんぎ)駅(新潟県上越(じょうえつし))

    ここは、工場への引き込み線上に設置されたことによって通過可能型スイッチバックになった駅である妙高高原方面から到着した列車は、「A⇒B⇒A⇒C」の順に経由して直江津方面に進む。私にとって、この駅とそばの待避線は未乗区間である。北陸新幹線の金沢開業後は、在来線の特急列車が廃止されたので、この駅を通過する旅客(りょかく)列車は存在しなくなった。

二本木(にほんぎ)の
スイッチバック

②  桑ノ原(くわのはら)信号場(長野県千曲(ちくまし))

    ここは駅ではなく、列車行き違いのために一時的に待避する信号場である。この信号場の隣駅同士である「稲荷山(いなりやま)~姨捨(おばすて)」間の所要時間を乗換案内アプリで調べると、約9分と約15分に大別される。約9分のほうは通過列車であり、約15分のほうは待避列車である。現在は、上下合わせて1日当たり8本の列車が待避している。私にとって、この信号場の待避線は未乗区間である。待避線を乗りつぶしの対象にするということは、全ての駅の発着番線を乗りつぶしの対象にするということにつながってしまう。乗り鉄の悩みである。

桑ノ原(くわのはら)の
スイッチバック

③  姨捨(おばすて)駅(長野県千曲(ちくまし))

    姨捨(おばすて)駅は日本三大車窓の駅として有名である。かつて、「快速リゾートビューふるさと」に乗車することによってこの駅を訪れたことがある(詳細はこちら)。

姨捨(おばすて)のスイッチバック

④  鐘釣(かねつり)駅(富山県黒部(くろべし))

    宇奈月(うなづき)方面から欅平(けやきだいら)方面に行く列車について、下図に基づいて説明すると、先頭の電気機関車は、「A⇒B⇒C(旅客(りょかく)乗降)⇒B⇒E」の順に走行し、最後尾の客車は、「A⇒B(旅客(りょかく)乗降)⇒A⇒B⇒E」の順に走行する。この駅を通過する旅客(りょかく)列車は存在しない。私は1988年8月15日に体験した。

鐘釣(かねつり)のスイッチバック

⑤  坪尻(つぼじり)駅(徳島県三好(みよしし))

    高松方面から高知方面に行く列車のうち、この駅に停車する列車は、下図において「B⇒C⇒D⇒C⇒B⇒A⇒B⇒C」の順に走行する。
    この駅に立ち寄った記憶が無いので、「A~B」間と「C~D」間は未乗区間である。
    この駅を含む路線を走行する普通列車は上下合わせて12本あるが、そのうち坪尻(つぼじり)に停車する列車は7本である。普通列車でさえも通過するのである。
    なお、停車する列車のうち7:00~18:00に停車する列車は6本のみという超秘境駅である。また、この駅に通じる道路は存在しないので車で行くことは不可能である。すなわち、ここは鉄道でしか行けない駅である。

坪尻(つぼじり)のスイッチバック

⑥  新改(しんがい)駅(高知県香美(かみし))

    配線形状は坪尻(つぼじり)駅と同様である。この駅に立ち寄った記憶が無いので、「A~B」間と「C~D」間は未乗区間である。
    この駅を含む路線を走行する普通列車は上下合わせて10本あるが、そのうち新改(しんがい)に停車する列車は7本である。普通列車でさえも通過するのである。
    なお、停車する列車のうち7:00~18:00に停車する列車は4本のみという超秘境駅である。

新改(しんがい)のスイッチバック

    この6か所の他にあと2か所存在するが、スイッチバックを利用する旅客(りょかく)列車が存在しないので、乗りつぶすことはできない。
⑦  初狩(はつかり)駅(山梨県大月市(おおつきし))
    スイッチバックを利用しているのは貨物列車だけである。
⑧  滝山(たきやま)信号場(鳥取県鳥取市)
    行き違い列車が存在しないので、スイッチバックを利用する必要が無い。

<番外>
    スイッチバックに関する極め付きとして、富山県立山町(たてやままち)に立山(たてやま)砂防工事専用軌道という乗り物がある。ここは、38段のスイッチバック数を誇る路線であり、連続18段スイッチバックというのは世界一である。乗り鉄にとっては魅惑の路線であるが、私が全線完乗を目指していた頃は、体験乗車できるのは富山県内在住者に限られていた。乗車するには住民票を移すしかなかった。
    現在は、富山県内在住者という条件が無くなったので、誰でも乗車することができる。但し、そのハードルは非常に高く、私にとって、ここは現在も未乗のままである。そのハードルとは、次のとおりである。
①  時期
    これに乗車できる時期は、7~10月のうちのわずか約14日である。
②  抽選
    乗車するには事前申し込みが必要であり、抽選で当選した者だけが乗車可能である。その競争率は約2~4倍である。
③  天候
    仮に当選しても、当日の天候が悪ければ中止となる。実施率は約60%である。7~10月というのは台風シーズンであり、天候不順の可能性は高い。
④  費用
    参加費は、大人ひとり3,000である。集合場所は、富山県立山町(たてやままち)にある立山(たてやま)カルデラ砂防博物館であり、集合時刻は午前8:30である。日帰りは不可能なので、立山(たてやま)駅近辺に1泊するしかない。往復交通費と宿泊費が発生する。