究極の自己満足!鉄道全線完乗

2019年2月1日(金)


    私は、(JRだけでなく私鉄や公営鉄道も含めて)日本国内の鉄道全線を完乗した。このこと自体は何の自慢にもならないし、表彰もされない。自己満足の極みである。鉄道趣味というものはまるで仙人の暮らしのようなものである。

(1)  歴史
    鉄道に興味を持ち始めたのは大学1年生の頃(1971年頃)である。もちろん、当初は完乗という意識は全く無かった。しかし、同じ地域を訪問するようなリピータではなかったので、旅行を繰り返せば、おのずから完乗に近づくことになった。
    就職するとビジネスで出張することもあり、それで更に完乗に近づいた。
    1990年頃に、ふと、当時のJR全線のうち既に6割程度乗りつぶしていることに気付いた。あと少し努力すれば完乗できると考え、完乗意識が急激に高まった。
    その頃、完乗の先駆者である宮脇俊三や種村直樹の書物を読みふけった。
    家族旅行では、なるべく未乗区間を選定した。当時、連れ合いはバスに酔いやすく、連続乗車時間は最長30分が限度であった。船については全く不可であり、許されるのは公園の手漕ぎボートくらいであった。タクシーについてはもっと酔いやすく、厳禁であった。
    また、我が子の幼児期においては、連れ合いのお達しにより、自宅や宿泊施設からの出発時刻は午前10時以降でなければならなかった。
    そのような条件付きで、連れ合いや我が子の喜びそうな場所を巡らなければならず、未乗区間を行程に含めることは至難の技であった。
    それでも「塵も積もれば山となる」であって、次第に乗りつぶしは進んでいった。
    1997年頃から、連れ合いの許しを得て、ゴールデンウイークにひとり旅をするようになった。主に北海道を乗りつぶした。このひとり旅で完乗にぐっと近づいた。
     JRを完乗した際の最後の路線は五能線であった。ひとり旅で「快速ノスタルジックビュートレイン」を利用しで五能線を走破した。当時のひとり旅は乗りつぶし第一主義だったので、沿線の観光については時間に余裕がある時だけであった。したがって、五能線の途中下車は(津軽鉄道乗りつぶしのための)五所川原(ごしょがわら)駅のみであった。
    乗りつぶしを進める中で、乗りつぶしていなかった区間が有ることに気付いて乗りつぶしに行ったこともあった。島原鉄道の「島原〜島原外港」の2.7km区間については、乗りつぶしを意識していない時期(大学時代)に徒歩観光したために未乗になっていた。したがって、九州に行った際に、その2.7km区間を乗りつぶすために島原まで足を伸ばした。
    これが私鉄完乗すなわち鉄道全線完乗の瞬間であった。

(2)  完乗対象の定義
    鉄道完乗において避けて通れないのが、対象とする鉄道をどのような方針で定めるかということである。次の路線はいずれも鉄道の定義に合致しているのだが、完乗対象としてはどうであろうか。
①  路面電車
    完乗対象とする。
②  地下鉄
    完乗対象とする。地下鉄の場合は特段の景色も無く、平日の仕事帰りに首都圏の地下鉄を乗りつぶした時は、心が折れそうになった。
③  新交通システム
    完乗対象とする。新交通システムには、鉄輪ではなくゴムタイヤで走行するものもある。札幌の地下鉄は、ゴムタイヤ走行なので新交通システムと言えそうだが、誰も新交通システムとは言わない。
    ウィキペディアによると、新交通システムに関する国土交通省による定義は次のとおりである。
    【動輪にゴムタイヤを使用した案内軌条式鉄軌道 (AGT) や、ガイドウェイバスなど、従来の鉄道とは異なる新しい技術を用いた中量軌道輸送システム
④  モノレール
    完乗対象に含める。
⑤  トロリーバス
    これも鉄道であり、完乗対象に含める。国内には立山黒部アルペンルートに存在する。私が完乗した時はその1路線だけであった。
⑥  ケーブルカー
    完乗対象に含めるが、このあたりから難しくなる。
    ケーブルカーという名称であれば完乗対象とするが、問題は 斜行エレベータである。ケーブルカーのような走行構造であっても、車内が階段状でなく直方体の箱になっているものがある。その箱が斜めに移動しているという点だけがビルのエレベータと異なり、内装もビルのエレベータと同じというものがある。不特定の人が利用する公共交通機関ではあるのだが・・・。斜行エレベータを完乗対象にするのは抵抗があるが、できる限り乗りつぶすこととした。
⑦  ロープウエー
    車体が地面から浮いた状態であり鉄道とは言い難いが、これも鉄道なのである。ロープウエーには交走式と循環式があるが、問題は循環式のほうである。循環式では、ロープウエーとリフトの境界線を定義することが困難(⑦参照)である。したがって、できる限り乗りつぶすこととした。
⑧  リフト
    箱になっているものはロープウエーで、箱になっていないものはリフトと考えがちであるが、どちらにも含めづらいものがある。4人乗りくらいのリフトで屋根付きというものがある。簡易な床板(足載せ台)と側面の囲いなどがあればロープウエーのゴンドラに近くなってくる。
    逆に、リフトよりも簡素な構造でティーバーなどがある。これは利用者がスキー板を装着したまま、ティーバーを掴んだ状態で、ティーバーに引っ張らせて雪上走行するものである。これも鉄道なのである。
    したがって、リフトについてはできる限り乗りつぶすこととした。
⑨  エレベータ
    もし斜行エレベータを完乗対象にするのであれば、垂直エレベータも完乗対象にすべきであるように感じられる。ビルのエレベータを完乗対象にしないというのは納得できる。しかし、山間の観光地にある垂直エレベータはどうであろうか。
    また、観光地にはエスカレータやベルトコンベアもある。
    いずれもできる限り乗りつぶすこととした。
⑩  遊園地の乗り物
    これは非常に難しい。
    本物のSL列車が走行している場合もあれば、100円硬貨1枚で乗車できて半径1mくらいの路線を1周するという幼児用列車もある。
   「鉄道文化むら」にある「シェルパくん」は遊園地の乗り物の範疇(はんちゅう)であるが、旧信越本線の路線を走行して施設の内外を移動する立派な鉄道である。
    遊園地の乗り物についてはできる限り乗りつぶすこととした。
⑪  新線
    新線の定義は難しい。線路を新たにショートカットした場合はどうだろうか。どの程度ショートカットしたかによる。カーブ状の線路を10mくらい内側に移設した場合、それは新線であろうか。5mではどうか、1mではどうか、という議論になってくる。
    水平移設ではなく、垂直移設の場合もある。高架化や地下化がそうである。それも新線であろうか。
    これらについても、できる限り乗りつぶすこととした。
⑫  複線
    複線区間については、下り線と上り線の両方を乗りつぶすというルールを設けている人もいるが、私は、片方だけで良いとしている。
    埼京(さいきょう)線は東北本線の線増という位置付けなのだが完乗対象である。
⑬  短絡線
    短絡線は、ある線路から別の線路に移動するための絡線である。短絡線についてもできる限り乗りつぶすこととした。
⑭  通過可能型スイッチバック駅
    通過可能型スイッチバック駅については、その駅に停車する列車でなければならない。JRについては全国で3か所あるが、いずれも各駅停車を利用しなければならず、秘境駅なのでその本数は極めて少ない。

(3)  完乗の証拠
    完乗したことを証明する手段は無い。あくまでも本人の自己満足である。

(4)  完乗状態の維持
    鉄道完乗したのちに、名古屋市営地下鉄など各地の都市部における地下鉄新線が開業したが、乗りつぶしていない。すなわち現在は完乗状態ではない。完乗状態のまま他界することは至難の技なので、そこまでは考えないようにしている。特に、沖縄県のモノレールである「ゆいレール」についてはハードルが高い。
    北海道新幹線については、札幌開業(予定:2030年度末)したら行くつもりである。長崎新幹線(予定:2022年)や北陸新幹線金沢以遠(予定:2046年)についてはまだわからない。
    リニア中央新幹線(予定:2027年名古屋開業)についてはどうしようか。