路線図ファン必見!ループ線はしご旅(群馬県みなかみ町(まち))

2022年6月2日(木)


    本日は、国内のループ線(詳細はこちら)の中で代表的な上越(じょうえつ)線のループ線を訪ねてみようと思う。

    上越(じょうえつ)線の「越後中里(えちごなかざと)⇒湯檜曽(ゆびそ)」間の上り線には、松川ループ線と湯檜曽(ゆびそ)ループ線というふたつのループ線が存在する。そのふたつのループ線のうち、松川ループ線は上り勾配であるが、湯檜曽(ゆびそ)ループ線は下り勾配である。両者の間に清水(しみず)トンネルが存在する。川端康成(かわばたやすなり)の「雪国」の冒頭に登場する「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」の「トンネル」とは、この清水(しみず)トンネルのことである。その小説では、水上(みなかみ)側から越後湯沢(えちごゆざわ)側に走行する下り列車が清水(しみず)トンネルを抜けて土樽(つちたる)駅に到着する様子を記述している。現在の下り線は、新清水(しんしみず)トンネルによってほぼ直線状態であるが、当時の下り線は、新清水(しんしみず)トンネルがまだ開通していないので、下り列車も清水(しみず)トンネルとこのふたつのループ線を走行していたのである。

連続ループ線

    私は下りも上りも利用したことがあるので、既に体験済みである。しかし、当時はループ線自体については全く意識していなかった。今回は、そのループ線をじっくりと眺めてみたい。
    また湯檜曽(ゆびそ)ループ線の周辺には、湯檜曽(ゆびそ)駅と土合(どあい)駅というふたつのモグラ駅(詳細はこちら)がある。土合(どあい)駅については下車したことがあるのだが、湯檜曽(ゆびそ)駅については下車も乗車もしたことがない。本日は、その未体験駅を含めて両モグラ駅のモグラぶりについても体験してみたい。

    上越(じょうえつ)線は、かつて、上野と新潟を結ぶ大動脈であった。しかし、上越(じょうえつ)新幹線に旅客(りょかく)を奪われてからは、ローカル線になってしまった。特に平日における水上(みなかみ)~越後中里(えちごなかざと)」間の旅客(りょかく)列車は、(季節列車1往復を除けば)1日当たり5往復であり、時刻表は次のとおりである。

時刻表

    下り列車については、8時28分や9時44分の列車に乗車することは可能であるが、早起きしなければならない。17時50分や20時50分の列車に乗ると、日没後なので車窓を楽しめない。したがって、結局13時40分の列車に乗るしかない。その結果、上り列車については、14時04分以降の列車に限られることになるが、それは15時16分と18時01分の2本しかない。18時01分の列車に乗ると、日没後なので車窓を楽しめない。結局、上り列車については15時16分の列車に限られる。 
    このように、現在の「水上(みなかみ)~越後中里(えちごなかざと)」間は超秘境路線であり、その途中駅は超秘境駅である。その超秘境路線において、次なる方針を遂行したい。
<方針>
①湯檜曽(ゆびそ)駅の改札口から下りホームまで歩く
②湯檜曽橋(ゆびそはし)に立って湯檜曽(ゆびそ)ループ線走行中の列車を眺める
③土合(どあい)駅の改札口と下りホームを往復する
④松川ループと湯檜曽(ゆびそ)ループ線を走行する列車に乗車する
⑤湯檜曽(ゆびそ)ループ線を走行する列車から第一湯檜曽川(ゆびそがわ)鉄橋を眺める

    「大宮~越後中里(えちごなかざと)」間については、新幹線と普通列車(快速を含む)の2案が考えられる。

<往路>

    往路は急ぐので「大宮~上毛(じょうもう)高原」間の新幹線を利用することにした。

    「大宮~越後中里(えちごなかざと)」間のうち往路の「水上(みなかみ)⇒越後中里(えちごなかざと)」間には、約4時間の空白が存在するので、「上毛(じょうもう)高原⇒土合(どあい)」間を結ぶ路線バスを利用する。したがって、「大宮⇒越後中里(えちごなかざと)」間の経路については、次のとおりである。
【大宮⇒上毛(じょうもう)高原】上越新幹線
【上毛(じょうもう)高原駅⇒土合(どあい)駅前】路線バス
【土合(どあい)駅前⇒湯檜曽(ゆびそ)駅前】路線バス
【湯檜曽(ゆびそ)⇒越後中里(えちごなかざと)】上越線
    図示すると、次のとおりである。

往路の経路(青)

    なお、湯檜曽(ゆびそ)駅前というバス停は、「上毛(じょうもう)高原駅⇒土合(どあい)駅前」間の途中に存在する。したがって、「上毛(じょうもう)高原駅⇒湯檜曽(ゆびそ)駅前⇒土合(どあい)駅前」という順番のほうが合計バス運賃が安価でかつ合計所要時間も短いことは明白である。しかし、さんざん検討した結果、前述の方針を全うするには、先に土合(どあい)駅前に行くしかないのである。

    越後中里(えちごなかざと)までしか行かないのだが、「大宮~越後中里(えちごなかざと)」間と「大宮~越後湯沢(えちごゆざわ)」間は運賃が同額なので「大宮~越後湯沢(えちごゆざわ)」間の乗車券を購入することにした。したがって、越後中里(えちごなかざと)において途中下車を申告すれば、無効印を要請せずとも切符を手元に残すことができる。
    「大宮~越後湯沢(えちごゆざわ)」間の片道営業キロは「100km超200km以下」である。したがって、片道乗車券では「大人の休日倶楽部(くらぶ)」ジパング会員割引(以下「大休30割」)を適用することができない。しかし、往復乗車券にすることによって合計営業キロが200km超になり、大休30割を適用することができる。

    全区間について新幹線経由とする。
    「大宮⇒越後湯沢(えちごゆざわ)」間の乗車券(ゆき)については、新幹線の「大宮⇒上毛(じょうもう)高原」間と在来線の「湯檜曽(ゆびそ)⇒越後中里(えちごなかざと)」間を利用する。この乗車券は途中下車前途有効なので、上毛(じょうもう)高原で下車して再び乗車することができる。その場合、上毛(じょうもう)高原で再び乗車するのではなく、在来線の後閑(ごかん)以遠を引き続き利用することもできる。本日は、湯檜曽(ゆびそ)で再び乗車する。すなわち、「後閑(ごかん)⇒湯檜曽(ゆびそ)」間については権利放棄である。

    一般に、新幹線と在来線の併行区間については、乗車券の券面が新幹線経由であろうと在来線経由であろうと、いずれか一方を選択することができる(例外区間有り)。これを「選択乗車」という。多くの利用者は、「選択乗車」という用語を知らずとも、この規則を利用する機会に遭遇していると推察される。
    新幹線と在来線の選択乗車については、新幹線の単独駅と在来線の対応駅を乗り継ぐこともできる。例えば、「高崎⇒越後湯沢(えちごゆざわ)」間の場合、後閑(ごかん)が上毛(じょうもう)高原の対応駅なので、「高崎⇒上毛(じょうもう)高原」間と「後閑(ごかん)~越後湯沢(えちごゆざわ)」間を乗り継ぐことができる。

選択乗車

    すなわち、この図において、「高崎⇒越後湯沢(えちごゆざわ)」間を含む乗車券の場合、券面記述が次の2案のいずれであろうと、いずれか一方を選択することができるのである。
【A案】①⇒②⇒④
【B案】①⇒③⇒④
    また、その乗車券が途中下車前途有効であれば、更に次の経路も選択肢となる。多くの利用者は、この経路については利用不可として検討していないことが多いと推察される。
【C案】「①⇒②」と「③⇒④」
【D案】「①⇒③」と「②⇒④」

    なお、「えきねっと」において、「高崎⇒越後中里(えちごゆざわ)」間の切符を申し込むと、越後湯沢(えちごゆざわ)経由になってしまう。経由地として「上毛(じょうもう)高原」と「水上(みなかみ)」を指定すると、「ご指定の条件を満たす経路がありませんでした。」というエラーメッセージが表示される。したがって、C案とD案については、「みどりの窓口」で申し込まなければならない。
    大休30割の場合、指定席券売機において、乗車券のみ発券したのちに「高崎⇒上毛(じょうもう)高原」間の特急券を申し込めば可能かもしれないが、試してみる勇気が湧かない。

<復路>

    復路については、急がないので普通列車(快速を含む)を利用することにした。

    「高崎⇒大宮」間の普通列車(快速を含む)にはグリーン車が存在するので、グリーン車を利用することにした。
    特急列車においては、普通車とグリーン車に料金差ほどの違いを感じてはいない。しかし、普通列車(快速を含む)においては両者の違いは歴然としている。したがって、特急列車のグリーン車を利用することはめったにないが、普通列車(快速を含む)のグリーン車はよく利用している。

    「高崎⇒大宮」間の営業キロは50km超であり、JREポイントをSuica(スイカ)グリーン券に交換すれば大休30割よりも安価である。料金比較は次のとおりである。
【JREポイント用Suicaグリーン券】600P
大休30割】700
【一般料金】1,000

(1)  レイルウェイクラブ

    ここは、店舗の名称からして鉄道ファン向けのカフェかと思いきや、そのような主張は一切なく、ごく普通のカフェである。駅舎内の改札外にあるのだが、類似の他のカフェよりもすいている。4人ボックス席も2か所ある。

コーヒーセット

(2)  新幹線とき

乗車券(ゆき) 大休30割

    右上の印影は、途中下車印である。かすれて見づらいが、文字は「上毛高原駅」である。

新幹線特急券 
大休30割

とき
305
号(E7系)(後姿)

(3)  土合(どあい)駅
<関東の駅百選>

谷川岳(たにがわだけ)の
登山口として親しまれている
日本一のモグラ駅

    土合(どあい)駅は、日本一のモグラ駅であり、下りホームから改札口までは486段の階段を上(のぼ)らなければならない。 谷川岳(たにがわだけ)登山を楽しむ人が首都圏から列車で土合(どあい)駅に到着すると、まず最初に486段の階段を(のぼ)るという大きな試練に立ち向かうこととなる。
    そのモグラぶりが観光名所になっているが、列車利用者は少なく、多くは自動車利用者である。本日は、貸切バスで来たと推察される団体客まで現れた。

    また、土合(どあい)駅は無人駅であり、ここには、駅舎を転用したカフェ「駅茶モグラ」がある。

    まずは、改札口から下りホームまで階段を下(お)りる。

462段の階段上からの眺め

    486段のうち下方の462段は全体を見渡せる。右側の斜面は荷物や土砂の輸送用に利用されたと推察される。ぜひ、ここにケーブルカーを設置してほしいものである。
    階段を下(お)りるにつれて、次第に気温が低くなる。漏水(ろうすい)のせせらぎも音量が増してくる。

下りホーム

駅名標

    次に、下りホームから改札口まで階段を上(のぼ)る。

462段の
階段下からの眺め

486段目を示すプレート

(4)  駅茶モグラ

    ここは、かつての駅事務室であり、今でもそのなごりをただよわせている。

カフェオレ&バタートースト

(5)  ゆびその湯 無料


    料金は無料なのだが、100円の募金を募(つの)っている。


    湯檜曽(ゆびそ)温泉街から湯檜曽(ゆびそ)駅まで歩いてみた。レストランやカフェはもちろんのことドライブインや大衆食堂さえも無い。ファーストフードもコンビニも無い。自動販売機を1台見つけたが、「お~い、お茶」は無かった。

(6)  第一湯檜曽川(ゆびそがわ)鉄橋

第一湯檜曽川(ゆびそがわ)鉄橋

    湯檜曽橋(ゆびそはし)から山の方向に目をやると、湯檜曽(ゆびそ)駅に向かう上り列車の姿を眺めることができる(動画はこちら)。

    土合(どあい)から湯檜曽(ゆびそ)へ向かう上り列車は、左回りに周回しながら高度を下げ、ほぼ1周したのちにループトンネルから出て第一湯檜曽川(ゆびそがわ)鉄橋を渡る

(7)  湯檜曽(ゆびそ)駅


上りホーム

    山の中腹に見えるのはループ線の架線である。上り列車は、その中腹を左から右へとゆっくり走行したのちに一旦姿を隠し、再びこのホームの奥に姿を現す。

清水(しみず)トンネルの入口
(上りホームからの眺め)

改札口から下りホームに向かう
通路

    土合(どあい)駅では多少の観光客も見受けられたが、こちらは皆無である。

    湯檜曽(ゆびそ)から乗車して越後中里(えちごなかざと)へ向かう。途中の「土合(どあい)⇒土樽(つちたる)」間の所要時間は12分であり、ひと駅区間としては長いほうである。車掌の検札が行われた。

(8)  土樽(つちたる)駅

    ここは、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」でおなじみの小説「雪国」において、清水(しみず)トンネルを抜けた列車が最初に入線した駅である。小説では、「駅」ではなく「信号所」となっている。当時はまだ駅ではなかったのである。なお、鉄道用語としては、「信号所」ではなく「信号場」である。
    小説では、その列車のことを汽車と表現している。テレビや映画などでもSLが牽引する場面が登場する。しかし、清水(しみず)トンネルは、煙害対策のために開業当初から電化されていて、電気機関車が牽引(けんいん)していた。当時は、電車も電気機関車が牽引(けんいん)する列車も全て汽車と言っていた時代である。

(9)  越後中里(えちごなかざと)駅

    ここは、無人駅であるが、駅舎はりっぱなものである。冬はスキー客でにぎわうものと推察されるが、本日は秘境駅の様相である。スキー場に通じる東口は施錠されていた。

(10)  ブルートレイン中里(なかざと)

旧型客車(スハ43系)

    これは、スキー客のための無料休憩所である。駅から東口に出れば近いのだが、東口に通じる通路が施錠されていたので、西口から歩いた。かなりの遠回りでありGoogle Map(グーグルマップ)で徒歩12分である。

(11)  瑞祥庵(ずいしょうあん)

    ここには、「日本のミケランジェロ」と言われた石川雲蝶(うんちょう)の仁王像(におうぞう)がある。

吽形(うんぎょう)&阿形(あぎょう)

(12)  越後中里(えちごなかざと)駅

乗車駅証明書

    この切符は磁気券であり、下車駅でこれを精算機に挿入すると支払うべき運賃が計算されるという仕組みである。
この切符の発行機には、発行のための押しボタンが2個備わっている。「大人」というボタンと「こども」というボタンである。

乗車券(かえり) 大休30割

    右上印影の意味は次のとおりである。
【入鋏済】越後中里(えちごなかざと)における乗車直後に、車掌が来て切符の有無を確認して捺印した。
【高崎】高崎における途中下車印。

    さあ、いよいよ連続ループ線である。まず、松川ループ線からスタートである。しかし、松川ループ線は全区間がトンネル区間なので、ループ感が湧かない。
    次は、湯檜曽(ゆびそ)ループ線である。上り列車が湯檜曽(ゆびそ)ループ線にさしかかると、進行方向の右側眼下に第一湯檜曽川(ゆびそがわ)鉄橋が見えてきた(動画はこちら)。

    「湯檜曽(ゆびそ)⇒土合(どあい)」間の所要時間は、次のとおりであり、下り列車と上り列車では顕著な差がある。湯檜曽(ゆびそ)ループの有無が所要時間に影響していると推察される。
下り】3分
【上り】9分
    なお、土樽(つちたる)~越後中里(えちごなかざと)」間の所要時間は、下り列車も上り列車も7分であり、松川ループの有無は所要時間に影響していないと感じられる。

(13)  高崎市タワー美術館 シニア無料

(14)  快速アーバンのグリーン車

    Suica(スイカ)グリーン券は電子切符であり、旅情に欠けるのが残念である。

快速アーバン

(15)  カンナムキンパ

    本日の夕食は、いつもどおり大宮駅の駅弁である。

彩膳(いろどりぜん)