超絶滅危惧種「駅の立ち売り」!峠駅の「峠の力餅(ちからもち)」(山形県米沢市(よねざわし))

2022年6月14日(火)


    福島から米沢(よねざわ)に至る路線(奥羽(おうう)本線)には、かつて4駅(赤岩(あかいわ)/板谷(いたや)/峠/大沢)連続スイッチバックが存在したが、山形新幹線開業と同時にすべて解消された。私は、その4駅連続スイッチバックを体験していない。悔やまれてならない。

    その4駅のうちのひとつである峠という駅では、駅前にある「峠の茶屋力餅(ちからもち)」という飲食店が駅のホームで立ち売りを続けている。立ち売りの販売品目は「峠の力餅(ちからもち)」一品である。
    立ち売りは、1960年頃、全国あちこちの駅で行われていた。売り子が「おせんにキャラメル~」などと叫んでいた。私の原産地である北九州市内に折尾(おりお)という駅がある。そこでも立ち売りが行われていた。弁当売りが「べんとう~」と叫んでいたのだが、私には「んとう~」と聞こえた。
    ネット情報によると、2022年5月6日時点において、峠の他に立ち売りを続けている駅は、次の3駅のみである。
【国吉(くによし)】千葉県いすみ市/土日祝日のみ
【直江津(なおえつ)】新潟県直江津市(なおえつし)/土日祝日のみ
【折尾(おりお)】福岡県北九州市/水曜除く毎日

    本日は、その峠駅の「峠の力餅(ちからもち)」を味わってみたい。
    なお、「峠の力餅(ちからもち)」は山形新幹線の車内や米沢駅近辺でも販売されているが、峠駅の「峠の力餅(ちからもち)」とは別物である。したがって、ぜひとも峠駅の「峠の力餅(ちからもち)」を食べてみたい。

    奥羽(おうう)本線は、山形新幹線上りアプローチ線新設工事の関係で、日中は「福島~庭坂(にわさか)」間が代行バスになっている。
    現在の福島アプローチ線は単線のため、「新幹線つばさ」は、上下列車いずれも西側の14番線ホームを利用している。この状態では、「新幹線つばさ」に併結される「新幹線やまびこ」が平面交差するので、輸送障害時のネックとなっている。それを解消するために、福島アプローチ線を複線化することとなった。その工事期間中、「福島~庭坂」間は日中のみ代行バスである。

行程図

    「庭坂(にわさか)~米沢(よねざわ)」間は1日6往復という超秘境路線であり、時刻表は次のとおりである。

時刻表

    日帰りで行く場合を検討してみた。次のとおりであり、カギ括弧内の時刻は下り列車の峠駅着時刻である。
【7時43分】早起きしても乗車することができない。
【8時34分】復路の列車までの待ち時間は5時間52分もある。
【13時19分】復路の列車までの待ち時間は7分しかなく、その次の列車までの待ち時間は4時間42分もある。
【16時32分】復路の列車までの待ち時間は1時間39分である。
【19時34分以降】暗くて見えない。

    米沢(よねざわ)折り返し案なども考えられるが、運賃がかさむ。
    結局、峠駅16時32分着の列車しかない。復路が夕方であるが、6月は日没が遅いのでぎりぎりセーフであることを期待したい。

    「大宮~峠」間の片道乗車券の営業キロは200km超なので往路と復路という2区間(あるいはその往復乗車券)について「大人の休日倶楽部(くらぶ)」ジパング会員割引(以下「大休(おときゅう)30割」)を適用することができる。

    「大宮~峠」間のうち「大宮~福島」間については新幹線を利用するのだが、乗車予定の列車は、つばさ127号」(前方)やまびこ127号」(後方)の合体編成である。両者の普通車は座席に相違がある。参考記事はこちら
つばさ】2&2(ツーアンドツー)
【やまびこ】3&2(スリーアンドツー)
    普通車におけるふたり席の座席数は、次のとおりである。
つばさ】150組 
【やまびこ】105組
    すなわち、「つばさ」には次なる利点がある。
①ふたり席の座席数が多い
②空席が多い
③フットレストがある
④午後便の場合に東側(AB席)に座れば直射日光を避けられる

    空席が多い理由を推察してみた。「えきねっと」では、「やまびこ127号」と「つばさ127号」が別々に現れるのだが、検索結果ページにおける第1案として「やまびこ127号」がページの上方に現れ、第2案として「つばさ127号」が第1案の下方に現れるのである。したがって、利用者は、「やまびこ127号」を選択する可能性が高くなる。
    本日は、ひとり旅ではあるが、すいているので「つばさ127号」を利用することにした。

    しかし、「えきねっと」で「大宮⇒峠」の乗車券を申し込むと米沢(よねざわ)折り返し経路になってしまう。「福島~庭坂」間が代行バスになっていることが関係していると推察される。しかたがないので、次なる手続きを実行することにした。
【手続き1】「大宮⇔福島」間の乗車券と特急券を申し込む
【手続き2】指定席券売機で発券する
【手続き3】「みどりの窓口」で乗車券のみを「大宮⇔峠」に変更する

    手続き3においては、クレジットカード決済が必要である。「えきねっと」で完結してほしいものである。

(1)  レイルウェイクラブ

モーニングセットNo.4

(2)  新幹線つばさ

乗車券(ゆき) 大休30割

新幹線特急券 
大休30割

つばさ127号

    17号車は、列車最端であるためか、がら空(あ)きであり、52席に対して乗客8名であった。

(3)  福島駅(JR)
<東北の駅百選>

古関裕而(こせきゆうじ)
生誕100年記念モニュメント

    毎時0分と30分(8時~20時)にメロディが流れる。このモニュメントは、時刻によって曲目が異なる。午前10時の曲を聴いた。「長崎の鐘(かね)」である。とても良い曲である。次第に目頭(めがしら)が熱くなる。
    (帰宅後も、数日の間、この曲が脳裏(のうり)から離れなかった。)

福島駅西口駅前モニュメント

    こちらのモニュメントでも曲が流れる。

(4)  福島駅(阿武隈(あぶくま)急行&福島交通)

    福島駅は、JRの他に阿武隈(あぶくま)急行と福島交通というふたつの私鉄が同居する珍しい駅である。ふたつの私鉄とはいうものの、福島交通は阿武隈(あぶくま)急行の株式を51%保有している。
    両者は電化方式が異なるのだが、ひとつのホームを共有している。ひとつのホームで異なる電化方式が見られるのは、ここのホームが国内唯一である。一般に、直流は車両設備が安価で、交流は地上設備が安価である。
【福島交通】直流
【阿武隈急行】交流
    
    ひとつのホームを共有しているということは線路も共有しているわけであり、福島駅の北寄りで分岐している。歴史としては福島交通のほうが古いので、正式には福島交通の所有であって阿武隈(あぶくま)急行が乗り入れているということと推察される。阿武隈(あぶくま)急行は、更にJR東北本線の線路も利用している。すなわち、阿武隈(あぶくま)急行の列車は、福島駅を出発すると、下図の赤色線で示すとおり、福島交通、JR、阿武隈(あぶくま)急行の順に線路を渡るのである。

阿武隈(あぶくま)急行の走行路線

(5)  いい電1日フリー乗車券

    この1日乗車券は非常にお得である。これほどの特典は珍しい。
【価格】800円
【採算】全線往復1回&最短区間1回
【特典】
① 小児1名&幼児2名も乗車可能
② 共同浴場1か所に入場無料
③ 店舗特典(カフェなど割引)



    福島交通では、全ての列車にヘッドマークが取り付けられていて、愛称「いい電」である。

    利用した列車の運転士も車掌も20歳代と推察される青年であった。途中駅で乗務員が交替したのだが、やはり同年代と推察される。頼もしい限りである。


    ここでは、阿武隈(あぶくま)急行と福島交通で線路を使い分けている(動画はこちら)。
【左】阿武隈(あぶくま)急行
【右】福島交通

(6) 飯坂(いいざか)温泉駅
<東北の駅百選>

駅舎

(7)  十綱橋(とつなばし)

十綱橋(とつなばし)
(国の登録有形文化財)

(8)  波来湯(はこゆ)


(9)  波来湯(はこゆ)公園 無料


足湯

(10)  あ〜しあわせの湯 無料
<「足合わせの湯」の語呂合わせ>


足湯

(11)  鯖湖湯(さばこゆ) パス所持者無料


    せっかくなので、「いい電1日フリー乗車券」を利用して共同浴場を体験してみたい。全9か所は無理だが、そのうちから1か所選んだ。ここは、松尾芭蕉(ばしょう)も入浴したと言われている。木造であり、ヒバの香りである。
    飯坂(いいざか)温泉の共同浴場はどこも熱いことで有名である。確かに、熱くて1分もいられなかった。

貯湯塔&鯖湖(さばこ)神社

(12)  旧堀切邸(ほりきりてい) 無料


    ここの足湯は、有料にしても良いくらい立派な施設である。

足湯

手湯

(13)  ちゃんこちゃんこの湯 無料


足湯

(14)  まつぼっくり

    ここは、足湯のあるカフェである。

足湯

湯の綿雪(わたゆき)

    これは、ミルクを凍らせて削ったかき氷であり、絶品である。

(15)  ギャラリー梟(ふくろう) 無料

(16)  福島県立美術館

(17)  デュッカ おひとり様割

ピッツァマルゲリータ

(18)  代行バス

バス停

    JRバス東北のバスがやってきた。

代行バス

    車掌が乗務している。

(19)  庭坂(にわさか)駅

    蒸気機関車時代、ここで、峠越えのための補機を連結したり切り離したりしていた。4駅スイッチバックが解消された現在でも、長く立派なホームが残っている。

    代行バスの車掌が引き続き列車の車掌として乗務した。その車掌が検札に来たのだが、私の乗車券が峠行きになっているのを知って、切符に入鋏済のスタンプを押した。そして、持ち帰ってよいと言ってくれた。入鋏済スタンプが無効印の意味を持つとは考えられないのだが・・・。

車掌がスタンプを押した乗車券
 
    右下のスタンプは車掌が捺印したスタンプである。

    福島県と山形県の県境は、板谷(いたや)峠という難所である。列車内で座っているとあまり感じないが、立っていると、上り勾配であることがよくわかる。列車は、その上り勾配をものともせずに、疾走している。廃駅となった旧「赤岩(あかいわ)」を通過した。板谷(いたや)に到着し、次はいよいよ峠である。トンネルを抜けると峠であるが、峠駅はシェルターに覆われているので、トンネルにある駅のようなものである板谷(いたや)と大沢(おおさわ)もシェルター内にある駅である。国内にはいくつかのモグラ駅(トンネルの中にある駅)が存在するが、板谷(いたや)、峠、大沢(おおさわ)の3駅もモグラ駅と言っても過言ではない。特に、峠は、トンネルから続いてのシェルターなのでトンネル感が抜けない。板谷(いたや)は福島県内に存在し、峠は山形県内に存在する。すなわち「板谷(いたや)~峠」間のトンネルは両県の県境に存在する。
    「県境の長いトンネルを抜けると、シェルターであった(動画はこちら)。」

(20)  峠駅

    米沢(よねざわ)行き普通列車が到着したとき、「峠の力餅(ちからもち)」の販売員の姿はなかった。通常は居る時間帯なので、特別な事情があったものと推察される。

駅舎

表札

駅舎の末端

駅名標

時刻表

スノーシェルター

    このスノーシェルターは、豪雪からポイントを守るための設備であり、現在の峠駅はそのポイント部分に存在する。この写真の左側空間はかつての引き込み線跡である。その引き込み線に旧駅舎が存在していた。ホームからその引き込み線に至る通路は工事現場状態である。

(21)  峠の茶屋力餅(ちからもち)

きなこ餅

峠の力餅
(ちからもち)

    これは、いわゆる大福餅である。中にはこしあんが入っている。


(22)  峠駅

つばさ145号&
つばさ154号

乗車券(かえり) 大休30割

    福島行き普通列車の到着時刻が近づいた。「峠の茶屋力餅(ちからもち)」の従業員が、法被(はっぴ)姿で「峠の力餅(ちからもち)」の入った木箱を携えてやってきた。
    福島行き普通列車が到着した。扉が開くと、販売員が、「ちから~もち~」と繰り返し叫んだ。誰も購入しなかった。販売員は列車の後ろ姿を見送った。

(23)  新幹線やまびこ

新幹線特急券 大休30割

やまびこ218号

    確保した指定席は7号車なのだが、8号車(新幹線オフィス車両)を利用した。私は、B席に座り、両脇の肘(ひじ)掛けをはねあげた。A席やC席に座ろうとする乗客は来なかった。

(24)  おこわ米八(よねはち)

    本日の夕食は、いつもどおり大宮駅の駅弁である。エキュートにおいてポイントバーコードを提示してSuica(スイカ)決済すると、後日のSuica(スイカ)へのチャージ時のビューカード由来ポイントも含めて、次なるポイントが付与される。結局、ポイントの三重取り(さんじゅうどり)である。
ポイントバーコード提示】1%
Suica(スイカ)決済】0.5%
チャージ0.5%

米八(よねはち)幕の内弁当