全車指定席でも自由席料金で乗れる!仙台以北の新幹線

2024年3月16日(土)


    新幹線「はやぶさ」は全車指定席であるが、仙台以北については、席を確保しなくても乗車(いわゆる立席(たちせき)利用)することができる。そのルールは、区間によって微妙に異なる。本記事では、区間別にそのルールを記述する。

自由席料金で乗れる区間(赤色と青色)

(1)  仙台~盛岡

    2018年7月1日(日)に、仙台駅において、「仙台~盛岡」間の途中駅に停車する「はやぶさ」については、新幹線自由席特急券で立席利用することができるという主旨の案内を目にした。
    JR東日本が公開しているWebの特急券に関するページでは、本件に関する記述を見つけることができない。地元以外の利用者には知ってほしくないという願望が透けて見える。残念なことである。このルールは、「はやぶさ」という看板列車に関する情報である。したがって、JR東日本のWebにおいても、本件に関する記述を掲載したほうがよいと感じられる。

    かつて、本件について、JR東日本に尋ねたことがある。

<質問主旨>
    「仙台~盛岡」間の途中駅に停車する全車指定席の「はやぶさ」については、新幹線自由席特急券で乗車(立席利用)可能か。

     JR東日本から回答が届いたのだが、回答内容については開示しないよう要請されている。

    「えきねっと」の「よくあるご質問」において、「仙台」というキーワードで検索すると、次なる記述が表示される。
<主旨>
    「仙台~盛岡」間の途中駅に停車する「はやぶさ/はやて/こまち」については、同区間を相互に利用する場合に限り、自由席特急券で普通車を利用可能である。

    なお、「はやて」については、「仙台~盛岡」間を走行する定期列車は存在しない。「こまち」については、「仙台~盛岡」間の途中駅に停車する定期列車は、平日では早朝(下り)と深夜(上り)の1往復のみであり、土休日では日中1往復が追加されて計2往復のみである。

    また、JR東日本が公開しているWebの特急券に関するページに、次なる記述が存在する。
<主旨>
    「はやぶさ/こまち/はやて/つばさ/かがやき」においては、満席の場合に新幹線立席特急券を発売することがある。料金は通常期の指定席特急料金から530円引きである(特定特急料金適用区間については特定特急料金)。

    一般に、新幹線立席特急券の特長は、次のとおりである。
【対象区間】全車指定席列車が走行する区間
【えきねっと】不可
【発売条件】満席時のみ(枚数制限有り)
【対象車両】列車と号車が指定される車両
【着席保証】空席であれば着席可能(予約者優先)

    「仙台~盛岡」間における任意の2駅間についても、新幹線立席特急券は存在する。しかし、その料金は、通常期の「はやぶさ」普通車指定席特急料金の530円引きである(特定特急料金適用区間については特定特急料金)。一方で、自由席特急料金は、通常期の「やまびこ」普通車指定席特急料金の530円引きである(特定特急料金適用区間については特定特急料金)。「やまびこ」普通車指定席特急料金は「はやぶさ」普通車指定席特急料金よりも安価なので、新幹線立席特急券よりも新幹線自由席特急券を利用するほうがお得である。新幹線自由席特急券を所持して「はやぶさ」を立席利用する場合については、料金差の他にも、次なる利点がある。
【発売日】1か月前
【えきねっと】可
【対象車両】有効日の全列車の普通車の空席(予約者優先)

    なお、対象列車は次のとおりである。
【新幹線自由席特急券】途中駅停車の「はやぶさ/はやて/こまち」およびすべての「やまびこ」
【新幹線立席特急券】すべての「はやぶさ/はやて/こまち」
    但し、特定特急料金適用区間については特定特急料金であり、対象列車は次のとおりである。
【新幹線特定特急券】途中駅停車の「はやぶさ/はやて/こまち」およびすべての「やまびこ」
【新幹線特定特急券(立席)】途中駅停車の「はやぶさ/はやて/こまち」

    以上をまとめると、次表のとおりである。

仙台~盛岡

    「えきねっと」において、途中駅停車の「はやぶさ」を選択しても自由席料金は表示されない。自由席特急料金で立席利用できるということも表示してほしいものである。残念なことである。

    Y!乗換案内アプリの検索結果においては、運賃と料金が表示される。その料金を示している「指定席」(または「自由席」)をタッチすると、「特別料金」という画面に遷移して、参考として「自由席/指定席/グリーン車/グランクラス/立席」の料金も表示される。とても良い機能であると感じられる。
    「はやぶさ」と「やまびこ」の場合は、次のとおり表示される。
【はやぶさ】自由席特急料金は表示されず立席特急料金が表示され、「満席時に発売」も併記される。
【やまびこ】自由席特急料金は表示されるが立席特急料金は表示されない。

    次なるふたつの図は、通常期における「仙台~盛岡」間に関する「はやぶさ」と「やまびこ」の各「特別料金」画面の例である。

「仙台~盛岡」間の「特別料金」画面
(「はやぶさ」の場合)

「仙台~盛岡」間の「特別料金」画面
(「やまびこ」の場合)

    同じ区間であっても、「はやぶさ」と「やまびこ」における扱いの相違がよくわかる。
    なお、途中駅停車の「はやぶさ」については、立席特急料金が表示され「満席時に発売」も併記されるのだが、自由席特急料金は表示されない。自由席特急料金で立席利用できるということも表示してほしいものである。残念なことである。本件について、Y!乗換案内に進言した(詳細はこちら)。下図は、途中駅停車の「はやぶさ」の場合(通常期)の表示案である。

「自由席特急料金」表示案

    この場合、「立席(※満席時に発売) 2,850円」については、消去せずに表示したままにしておいても間違いではないのだが、誰も購入しようとは思わないので無駄な情報である。

(2)  盛岡~新青森

    この区間については、厳密に言えば「自由席料金で乗れる」ということではなく、「自由席料金と同一と推察される料金で乗れる」ということである。
    この区間については、自由席車両を伴う列車が存在しないので、新幹線自由席特急券は存在しない。しかし、この区間における任意の2駅間について新幹線特定特急券(立席)が存在し、その料金は特定特急料金である。この金額は、もし「はやぶさ」に自由席が存在していれば自由席料金として適用されると推察される金額である。
    一般に、新幹線立席特急券は満席時に発売されるが、「盛岡~新青森」間の新幹線特定特急券(立席)は満席でなくても発売される。

    なお、「盛岡~新青森」間については「はやぶさ」だけでなく「はやて」も存在するが、定期列車としては早朝1本(下り)と深夜1本(上り)の1往復だけである。その料金体系は「やまびこ」と全く同じである。ネットに次なる主旨の記事が存在する。
【「はやて号」に立席で乗車する場合は、当該区間の自由席特急券と同じ額である。】
    これは、「新幹線特定特急券(立席)」の金額が自由席特急券の金額と同額であるという主旨であると推察されるが、この表現は不適切である。なぜならば、「盛岡~新青森」間においては自由席特急券が存在しないからである。したがって、「自由席特急券と同じ額」ではなく「もし自由席が存在していれば自由席料金として適用されると推察される額」という表現のほうが適切である。

    以上をまとめると、次表のとおりである。

盛岡~新青森

    Y!乗換案内アプリの検索結果において「指定席」をタッチすると、「特別料金」という画面に遷移して、参考として「指定席/グリーン車/グランクラス/特定特急料金」の料金も表示される。前述の「仙台~盛岡」間と比べると、次のとおりである。いずれも、対象となる区間は、括弧内に記述した区間における任意の2駅間である。
【仙台~盛岡】立席特急料金が表示され、「満席時に発売」も併記される(前述のとおり)。
【盛岡~新青森】特定特急料金が表示され、「満席時に発売」は併記されない。

    次なる図は、通常期における「盛岡~新青森」間に関する「はやぶさ」の「特別料金」画面の例である。

盛岡~新青森」間の「特別料金」画面
(「はやぶさ」の場合)

    なお、「特定特急料金」という表記は、利用者にとってわかりづらい。ここでは、設備別に記載しているので、「特定特急料金」ではなく「立席」と表記すべきであると感じられる。

    同じ「はやぶさ」であっても、「仙台~盛岡」間と「盛岡~新青森」間では扱いの相違がよくわかる。「えきねっと」においても、これくらいの配慮を期待したい。
    「えきねっと」では受け付けないので、表示しなくて当然であるという意見もあるかもしれない。しかし、「えきねっと」では、受け付けないにもかかわらず、普通列車のグリーン料金を参考に表示している。その方針に準じれば、特定特急料金を表示すべきである。というよりも、盛岡~新青森」間における新幹線特定特急券(立席)は満席時でなくても発売されるので、「えきねっと」で受け付けるようにしてほしいものである。

(3)  新青森~新函館北斗

    この区間についても、「盛岡~新青森」間と同様である。すなわち、次のとおりである。

    この区間については、自由席車両を伴う列車が存在しないので、新幹線自由席特急券は存在しない。しかし、この区間における任意の2駅間について新幹線特定特急券(立席)が存在し、その料金は特定特急料金である。この金額は、もし「はやぶさ」に自由席が存在していれば適用されると推察される金額である。
    この区間における任意の2駅間の新幹線特定特急券(立席)は、満席でなくても発売される。
    Y!乗換案内アプリの検索結果において「指定席」をタッチすると、「特別料金」という画面に遷移して、参考として「指定席/グリーン車/グランクラス/特定特急料金」の料金も表示される。「特定特急料金」に「満席時に発売」は併記されない。
    なお、「特定特急料金」という表記は、利用者にとってわかりづらい。ここでは、設備別に記載しているので、「特定特急料金」ではなく「立席」と表記すべきであると感じられる。

    「えきねっと」でも、特定特急料金を表示してほしい。というよりも、新青森以北における新幹線特定特急券(立席)は満席時でなくても発売されるので、「えきねっと」で受け付けるようにしてほしいものである。

    なお、「新青森~新函館北斗」間については「はやぶさ」だけでなく「はやて」も存在するが、定期列車としては早朝2本(下り)と深夜2本(上り)の2往復だけである。その料金体系は「やまびこ」と全く同じである。前述の「盛岡~新青森」間において紹介した「自由席特急券と同じ額」というネット記事については、「新青森~新函館北斗」間についても同様に不適切である。

(4)  盛岡~秋田

    この区間についても、「盛岡~新青森」間と同様である。但し、「はやぶさ/はやて」ではなく「こまち」である。すなわち、次のとおりである。

    この区間については、自由席車両を伴う列車が存在しないので、自由席特急券は存在しない。しかし、この区間における任意の2駅間について特定特急券(立席)が存在し、その料金は特定特急料金である。この金額は、もし「こまち」に自由席が存在していれば適用されると推察される金額である。
    「盛岡~秋田」間における任意の2駅間の特定特急券(立席)は、満席でなくても発売される。
    Y!乗換案内アプリの検索結果において「指定席」をタッチすると、「特別料金」という画面に遷移して、参考として「指定席/グリーン車/特定特急料金」の料金も表示される。「特定特急料金」に「満席時に発売」は併記されない。
    なお、「特定特急料金」という表記は、利用者にとってわかりづらい。ここでは、設備別に記載しているので、「特定特急料金」ではなく「立席」と表記すべきであると感じられる。

    「えきねっと」でも、特定特急料金を表示してほしい。というよりも、「盛岡~秋田」間における新幹線特定特急券(立席)は満席時でなくても発売されるので、「えきねっと」で受け付けるようにしてほしいものである。

(5)  福島~新庄

    この区間は、仙台以北ではないが関連情報として記述する。
    この区間についても、「盛岡~秋田」間と同様である。但し、「こまち」ではなく「つばさ」である。すなわち、次のとおりである。

    この区間については、自由席車両を伴う列車が存在しないので、自由席特急券は存在しない。しかし、この区間における任意の2駅間について特定特急券(立席)が存在し、その料金は特定特急料金である。この金額は、もし「つばさ」に自由席が存在していれば適用されると推察される金額である。
    この区間における任意の2駅間の特定特急券(立席)は、満席でなくても発売される。
    Y!乗換案内アプリの検索結果において「指定席」をタッチすると、「特別料金」という画面に遷移して、参考として「指定席/グリーン車/特定特急料金」の料金も表示される。「特定特急料金」に「満席時に発売」は併記されない。
    なお、「特定特急料金」という表記は、利用者にとってわかりづらい。ここでは、設備別に記載しているので、「特定特急料金」ではなく「立席」と表記すべきであると感じられる。

    「えきねっと」でも、特定特急料金を表示してほしい。というよりも、「福島~新庄」間における新幹線特定特急券(立席)は満席時でなくても発売されるので、「えきねっと」で受け付けるようにしてほしいものである。

(6)  その他の全車指定席列車走行区間

    この区間は、仙台以北ではないが関連情報として記述する。いずれも、対象となる区間は、括弧内に記述した区間における任意の2駅間である。
① 次なる列車については、新幹線立席特急券が存在し、満席時に発売されることがある。その料金は、通常期の普通車指定席特急料金から530円引きである(特定特急料金適用区間については特定特急料金)。
【東京~仙台】はやぶさ
【東京~金沢】かがやき
② 次なる列車については、新幹線立席特急券が存在し、満席時に発売されることがあると推察される。その料金は、通常期の普通車指定席特急料金から530円引きである(特定特急料金適用区間については特定特急料金)。
【東京~仙台】こまち
    「こまち」は、(遅延しない限り)全ての列車が「はやぶさ」に併結される。「東京~盛岡」間については、Y!乗換案内アプリの検索結果では「はやぶさ」のみ表示され「こまち」が表示されないので、立席の表示を確認することはできない。
③ 次なる列車については、新幹線立席特急券は存在しないと推察される。
【東京~福島】つばさ
    「つばさ」は、一部の列車を除いて(遅延しない限り)「やまびこ」に併結される。「東京~福島」間については、Y!乗換案内アプリの検索結果では「やまびこ」に併結されるか否かによって表示が異なる。
【併結有り】「つばさ」が表示されないので、立席の表示を確認することはできない。
【併結無し】「指定席」をタッチしても、立席は表示されない。

    Y!乗換案内アプリ以外についても調べてみた。
【NAVITIME(ナビタイム)】
    料金を示す「指定席」をタッチすれば、「指定席/グリーン/グランクラス」の料金が表示される。しかし、立席に関する料金は表示されない。
【ジョルダンの乗換案内】
    設備別の料金表示は、有料機能になっている。
【駅すぱあと for web】
    料金を示す「座種」をタッチすれば、「指定席/グリーン/グランクラス/立席」の料金が表示される。立席については、「(※満席時に発売)」も併記される。しかし、「仙台~盛岡」間の途中駅停車「はやぶさ」に関する自由席料金は、表示されない。盛岡以北、「盛岡~秋田」間、および「福島~新庄」間については特定特急料金が表示され、「(※満席時に発売)」は併記されない。すなわち、Y!乗換案内アプリと全く同一である。
【駅探(Web版)】
    NAVITIMEと全く同一である。

    なお、「大人の休日倶楽部(クラブ)パス」は、新幹線を含めて特急の自由席を何回でも利用することができる。普通車指定席を利用する場合は、6回まで無料で利用することができる。したがって、全車指定席の列車を利用する場合は、その無料特典を利用するか、別途特急券を購入しなければならない。しかし、仙台以北については、本記事と類似のルールが適用される。
    2018年5月29日(火)に発売された「大人の休日倶楽部パス(東日本)」の「ご案内2」券片には、上記(1)(2)(4)に関連する記述が存在する。次のとおりである。

<ご案内2の主旨>
    「盛岡~新青森」間の駅間および「盛岡~秋田」間の駅間においては、指定券無しで普通車の空席を利用可能である。また「仙台~盛岡」間の途中駅に停車する「はやぶさ/はやて」で、同区間を利用する場合も同様である。

【ご案内2】
(2018年6月29日乗車)