ダムやダム湖の名称は、地名を採用していることが多い。ダムの下流側に存在する水力発電所の名称も地名を採用していることが多い。更に、ダム湖の名称である「〇〇湖」は通称であって、正式名称は「〇〇貯水池」や「〇〇調整池」である。ダム、ダム湖、貯水池、および発電所という計4者が同じ地名を採用していることが多い。例えば、「相模ダム/相模湖(さがみこ)/相模貯水池/相模発電所」という関係である。
しかし、そのような慣例に反しているのが、本沢ダムと城山ダムである。下表は、一般社団法人電力土木技術協会の水力発電所データベースに存在する城山発電所と津久井発電所に関する表記の抜粋である。
上表における「ダム名」というのは、発電所の取水元(しゅすいもと)であるダムを示している。城山発電所が本沢(ほんざわ)ダムと城山ダムから取水していることを示していて、津久井発電所が城山(しろやま)ダムと沼本(ぬまもと)ダムから取水していることを示している。
上表における「貯水池名称」というのは、発電所の取水元である貯水池(すなわちダム湖)を示している。城山発電所が本沢調整池(すなわち城山湖)と城山貯水池(すなわち津久井湖)から取水していることを示していて、津久井発電所が城山貯水池(すなわち津久井湖)と沼本調整池から取水していることを示している。
このデータベースでは、「〇〇湖」という通称名は表記されていない。その通称名は、次のとおりである。
【本沢調整池】城山湖(しろやまこ)
【城山貯水池】津久井湖(つくいこ)
以上を図示すると、次のとおりである。
すなわち、現状は、「本沢ダム/本沢調整池/城山湖/城山発電所」と「城山ダム/城山貯水池/津久井湖/津久井発電所」となっているのである。
まことにややこしい。諸悪の根源は、両者のダム名と貯水池名称である。もし、次のとおり命名しておけば、混乱を招かずに済んだと推察される。
【本沢ダム】⇒城山ダム
【城山ダム】⇒津久井ダム
【本沢調整池】⇒城山貯水池
【城山貯水池】⇒津久井貯水池
このように命名しておけば、「城山ダム/城山貯水池/城山湖/城山発電所」と「津久井ダム/津久井貯水池/津久井湖/津久井発電所」となって、混乱を招かない。
もし、「本沢ダム」という名称が必須であれば、「本沢ダム/本沢調整池/本沢湖/本沢発電所」とすればよかった。その場合、「津久井ダム」を「城山ダム」と命名して「城山ダム/城山貯水池/城山湖/城山発電所」とすることもできたのである。