「片道運賃+α」で往復する!地下鉄の裏ワザ「改札外連絡乗り換え」

2023年12月3日(日)


    都心を散策する場合、通常は一日乗車券のたぐいを利用する。しかし、特定の駅間を往復するだけという場合、一日乗車券では割高となる可能性がある。
    例えば、「浅草(あさくさ)⇔新橋(しんばし)」間を往復する場合、その運賃は次のとおりである。
【銀座線で往復】209円×往復=418円
【浅草線で往復】220円×往復=440円
【都営地下鉄ワンデーパス】500円
【東京メトロ24時間券】600円
【東京メトロ・都営地下鉄共通一日乗車券】900円

    この往復運賃を「片道運賃+α(プラスアルファ)」となる290円で済ませることができる。その方法は、東京メトロと都営地下鉄の間における「改札外連絡乗り換え」を利用することである。銀座線で往復するよりも128円お得である。
    例えば、「往路は銀座線で復路は浅草線」とするのである。その手順は、次のとおりである。
① 銀座線浅草駅の券売機で連絡乗車券290円を購入
    この切符には、行先駅名は記載されていなくて、「浅草から都営地下鉄線連絡290円区間」の旨が記載されているだけである。

連絡乗車券

② その切符を銀座線浅草駅の改札機に投入して入場
③ 銀座線のみの経路で銀座線新橋駅へ向かう
④ ②で使用した切符を銀座線新橋駅の改札機に投入して出場
    この時点では、切符は回収されずに戻ってくる(これが重要な点である)。券面には「下車前途無効」という記載が存在するが、下車ではなく乗り換えのための出場として扱われる。

銀座線新橋駅における出場

⑤ 銀座中央通りを散策
⑥ ④で戻ってきた切符を浅草線新橋駅の改札機に投入して入場

浅草線新橋駅における入場

⑦ 浅草線のみの経路で浅草線浅草駅へ向かう
⑧ ⑥で使用した切符を浅草線浅草駅の改札機に投入して出場
    この時点では、切符は回収される。

浅草線浅草駅における出場

    ①が銀座線浅草駅でなく浅草線浅草駅である場合についても、同様の考えで、「往路は浅草線で復路は銀座線」とすればよい。
    ③については、東京メトロのみの経路であれば、銀座線のみではなく他の路線を経由しても構わない。⑦についても、都営地下鉄のみの経路であれば、浅草線のみではなく他の路線を経由しても構わない。但し、重複通過となる駅が存在することは許されない。

    ④については、ネット情報において、前述の④において「オレンジ色の改札機を通る必要がある」という主旨の記述が見受けられるが、「改札外連絡乗り換え」の場合は、どの改札機でもよい。東京メトロの新橋駅にはオレンジ色の改札機は存在しない。「オレンジ色の改札機を通る必要がある」のは、紙切符によって同一事業者間における改札外乗り換えを行う場合のみである。

裏ワザ可能例

    一般に、1枚の切符で2事業者以上の路線を利用する場合、その切符を連絡乗車券という。それが近距離同士の場合、割引になっていることが多い。以下、次のとおり定義する。
【メトロ】東京メトロ
【都営】都営地下鉄
【連絡運賃】メトロと都営の間における連絡乗車券の運賃
    連絡運賃の計算式は、次のとおりである。
    連絡運賃=メトロ運賃+都営運賃-70円
    すなわち、上例の運賃は、次のとおり計算される。
【メトロ運賃】
    「浅草⇒上野広小路」間の180円
【都営運賃】
    「上野御徒町⇒蔵前⇒浅草」間の180円
【連絡運賃】180円+180円-70円=290円

    上図における乗り換えはいずれも改札外乗り換えであるが、多少性格が異なる。
【新橋】異なる事業者間
【上野広小路/上野御徒町】メトロ同士
【蔵前】都営同士
    新橋は改札外連絡乗り換えであるが、新橋以外は単なる改札外乗り換えである。一般に、改札外乗り換えにおいては、乗り換え時間という制約が存在する。
【同一事業者間】1時間以内
【異なる事業者間】
  【ICカード】1時間以内
  【紙切符】当日中
    上述の⑤における滞在時間は、「異なる事業者間」の「紙切符」なので1時間超であっても構わない。実際に、新橋で乗り換えた時の時刻は、次のとおりであった。
【銀座線新橋駅出場時刻】9時38分
浅草線新橋駅入場時刻】16時57分

銀座線銀座駅入場時刻

浅草線新橋駅入場時刻

    もし、乗り換え時間が1時間以内であれば、紙切符ではなくICカードでも本記事で示す裏ワザを利用することができる。ICカードを利用すれば紙運賃ではなくIC運賃で計算されるので、さらに数円の節約となる可能性がある。実は、この「乗り換え時間が1時間以内におけるICカードによる連絡運賃」という割引は、多くの利用者が無意識のうちに利用していることである。自動精算なので、割引されたことに気付いていないだけのことである。
    上例の場合では、あらかじめ連絡乗車券を購入せずにICカードを利用すると、都度払いすることとなる。その乗り越し精算額は、新橋における滞在時間に応じて、次のとおりである。
滞在時間が1時間以内】
  【銀座線新橋駅出場時の精算額209円
  【浅草線浅草駅出場時の精算】77円
  【合計精算額】286円
    あらかじめ連絡乗車券を購入した場合は290円なので、ICカードを利用すれば紙切符よりも4円お得である。
    なお、浅草線浅草駅出場時の精算額が77円というのは、次なる計算による。
    【連絡IC運賃】178円+178円-70円=286円
    【差額】286円-209円=77円
滞在時間が1時間超
  【銀座線新橋駅出場時の精算額209円
  【浅草線浅草駅出場時の精算】220円
  【合計精算額】429円

    以下、次のとおり定義する。
【出発駅】上例の銀座線銀座駅に該当する駅
【目的駅】上例の新橋駅に該当する駅
【帰着駅】上例の浅草線銀座駅に該当する駅
【発着駅】出発駅と帰着駅

    結局、要点の覚え方は、次のとおりである。
(1) 出発駅と帰着駅が別事業者である
(2) 目的駅に両事業者の駅が存在する

    この恩恵を受けるのは、発着駅同士と目的駅同士がいずれも「改札外連絡乗り換え」対象駅だからである。なお、「改札外連絡乗り換え」が認められている駅は、同一駅名とは限らない。メトロと都営の間における「改札外連絡乗り換え」対象駅は、次のとおりである。

改札外連絡乗り換え」対象駅

    また、発着駅が同一駅名である必要は無い。改札外連絡乗り換え駅同士である必要も無い。すなわち、往復ではない場合でも目的駅が改札外連絡乗り換えであればお得となる。例えば、前述の連絡乗車券「浅草から都営地下鉄線連絡290円区間」では、復路において浅草を越えて本所吾妻橋(ほんじょあづまばし)まで行くことができる。
    出発駅が銀座線浅草駅であって銀座線新橋駅で出場して1時間超のあいだ散策してから浅草線新橋駅で入場する場合、いくつかの帰着駅の例(浅草⇒新橋⇒帰着駅)を列挙すると次のとおりである。以下、「都度払い」の金額はICカードを使用した場合であり、新橋における滞在時間が1時間超という条件なので(上述したとおり)70円引きではない。

【本所吾妻橋着】
  【連絡運賃】180円+180円-70円=290円
  【都度払い】209円+220円=429円
    Y!乗換案内などのアプリでは、発着駅が同一であると受け付けられないので、「浅草⇒新橋⇒浅草」という区間の連絡運賃を表示させることはできない。しかし、「浅草⇒新橋⇒本所吾妻橋」という区間であれば、その連絡運賃を表示させることができる。Y!乗換案内によって連絡運賃を表示させるための設定例は、「浅草⇒上野広小路⇒新橋⇒蔵前⇒本所吾妻橋」である。

本所吾妻橋帰着例

【押上(おしあげ)着】
  【連絡運賃】180円+220円-70円=330円
  【都度払い】209円+220円=429円
    Y!乗換案内によって連絡運賃を表示させるための設定例は、「浅草⇒上野広小路⇒新橋⇒蔵前⇒押上」である。

押上帰着例

【本八幡(もとやわた)着】
  【連絡運賃】210円+280円-70円=420円
  【都度払い】209円+315円=524円
    Y!乗換案内によって連絡運賃を表示させるための設定例は、「浅草⇒上野広小路⇒新橋⇒馬喰横山⇒本八幡(都営線)」である。

本八幡帰着例

    浅草発着で新宿往復する場合は、メトロのみで往復するよりも214円もお得である。
  【連絡運賃】180円+180円-70円=290円
  【メトロのみ】252円×往復=504円
  【都度払い】252円+280円=532円
    Y!乗換案内によって連絡運賃を表示させるための設定例は、「浅草⇒赤坂見附⇒新宿(メトロ)⇒新宿西口⇒本所吾妻橋」である。

新宿往復例

    冒頭の例「浅草⇒新橋⇒浅草」においては、発着駅と目的駅が逆であっても構わない。すなわち、「新橋⇒浅草⇒新橋」においても同様である。
  【連絡運賃】180円+180円-70円=290円
  【都度払い】209円+220円=429円
    Y!乗換案内によって連絡運賃を表示させるための設定例は、「新橋⇒上野広小路⇒浅草⇒蔵前⇒大門(東京都)」である。

新橋発着例

    新宿往復例においては、発着駅と目的駅が逆であっても構わない。すなわち、「新宿⇒浅草⇒新宿西口」についても同様である。
  【連絡運賃】180円+180円-70円=290円
  【都度払い】252円+280円=532円
    Y!乗換案内によって連絡運賃を表示させるための設定例は、「新宿(メトロ)⇒赤坂見附⇒浅草⇒馬喰横山⇒新宿西口」である。

新宿発着例

    なお、上述のいずれの例においても、出発駅と帰着駅が逆であっても構わない。一般に、次なる条件が揃えば、本記事で示す裏ワザを利用することができる。
(a) 出発駅と帰着駅が別事業者である
(b) 目的駅が出発駅や帰着駅から離れていて改札外連絡乗り換え駅である
(c) 出発駅と帰着駅の近辺に両事業者間の乗り換え駅が存在する

裏ワザ行程図

    なお、上述の(b)については、遠方過ぎると本記事で示す裏ワザを利用することができない。例えば、上図の寄り道タイプにおいて290円の連絡乗車券を所持してA駅を出発する場合であって「A1⇒B1」間が300円である場合、B1駅で出場することができないのである。

<裏ワザ不可能例>
    下図で示す経路を考えたい。「荻窪(おぎくぼ)⇒新宿」間の連絡運賃は、290円である。また、「荻窪~浅草」間のメトロのみの運賃は、300円である。

裏ワザ不可能例

    この場合、「荻窪から都営地下鉄線連絡290円区間」の切符を所持して実際の経路をたどると、銀座線浅草駅で出場することができない。なぜならば、ここで出場を認めたら「荻窪~浅草」間のメトロのみの運賃300円の存在価値が無くなるからである。すなわち、連絡運賃が300円以上でなければ銀座線浅草駅で出場できないのである。
    連絡運賃は、次のとおりである。括弧内の数値は、【メトロ運賃&都営運賃】を表している。括弧外の金額は、両運賃の合計から70円を引いた金額(すなわち連絡運賃)である。
【180&180】290円
210&180320円
180&220330円
210&220360円
  (以下省略)
    連絡運賃が320円や330円では、銀座線浅草駅で出場して浅草線浅草駅で入場することができる。

連絡乗車券

銀座線浅草駅における出場

    しかし、本所吾妻橋以遠や蔵前以遠で出場するには精算が必要である。

精算券

    連絡運賃が360円であれば、銀座線浅草駅経由で本所吾妻橋や蔵前に行って出場することができる。すなわち、「荻窪から都営地下鉄線連絡360円区間」の連絡乗車券を購入することが正統な処置であるY!乗換案内において、「荻窪⇒赤坂見附⇒浅草⇒馬喰横山⇒新宿」を設定すると、連絡運賃として360円(IC運賃359円)が表示される。