各鉄道事業者は、さまざまな「お得なきっぷ」を発売している。最近は、ICカードやスマホに記録するタイプも存在する。一般に、「お得なきっぷ」に紙きっぷと電子きっぷの2種類が存在する場合、紙きっぷよりも電子きっぷのほうがお得である。なぜならば、フリーエリア外に乗り越す場合、乗り越し運賃は、「お得なきっぷ」が紙きっぷである場合よりも電子きっぷである場合のほうが低額なのである。これには、次なるルールが関係している。
① IC運賃と紙運賃の違い
乗り越し運賃が「IC運賃<紙運賃」の場合、当然のことながら電子きっぷのほうがお得である。
② 原券が電子きっぷであるか紙きっぷであるか
原券が電子きっぷであれば乗り越し運賃もIC運賃であり、原券が紙きっぷであれば乗り越し運賃も紙運賃である。
以下、JR東日本の都区内パスを例にして記述する。
① IC運賃と紙運賃の違い
JR東日本においては、紙運賃がIC運賃の四捨五入であるか切り上げであるかについては、対象となる区間に依存する。その違いは、次のとおりである。
【幹線や地方交通線を含む】四捨五入
【電車特定区間と山手線内】切り上げ
すなわち、電車特定区間内において乗り越す場合、紙運賃よりもIC運賃のほうが低額である(同額の場合も存在する)。したがって、都区内パスについても、紙きっぷよりも電子きっぷのほうがお得である。しかも電子きっぷであれば、精算処理は改札機によって自動精算されるので、精算の手間がはぶける。
電車特定区間のうち都区内パスのフリーエリア外である駅は、次の区間の各駅である。
【京葉線】舞浜~千葉みなと
【総武線】市川~千葉
【常磐線】松戸~取手
【東北線】川口~大宮
【埼京線】戸田公園~大宮
【中央線】吉祥寺~高尾
【武蔵野線】全区間
【青梅線】全区間
【五日市線】全区間
【南武線】全区間
【横浜線】全区間
【鶴見線】全区間
【東海道線】川崎~大船
【根岸線】全区間
【横須賀線】武蔵小杉~久里浜
【JR相鉄直通線】羽沢横浜国大
② 原券が電子きっぷであるか紙きっぷであるか
一般に、原券が紙きっぷであれば乗り越し運賃も紙運賃であり、原券が電子きっぷであれば乗り越し運賃もIC運賃である。このルールは、原券が「お得なきっぷ」の場合も同様である。
以下、具体例である。
(1) 都区内から都区外へ
都区内パスを所持して都区内の駅から武蔵小金井(むさしこがねい)に行く場合、乗り越し区間は「西荻窪(にしおぎくぼ)⇒武蔵小金井」間である。その乗り越し運賃は、都区内パスが電子きっぷであるか紙きっぷであるかに応じて、次のとおりである。
【電子きっぷ】178円
【紙きっぷ】180円
すなわち、都区内パスが電子きっぷであれば乗り越し運賃が2円お得である。
その精算処理は、都区内パスが電子きっぷであるか紙きっぷであるかに応じて、次のとおりである。
【電子きっぷ】
① 改札機にタッチする
② 自動精算される(178円)
③ 出場する
【紙きっぷ】
① 精算窓口に都区内パスを提示する(精算機は不可)
② 精算する(180円)
③ 都区内パスを受け取って出場する
(2) 都区外から都区内へ
都区内パスを所持して武蔵小金井から都区内の駅で下車する場合、乗り越し区間は「武蔵小金井⇒西荻窪」間である。その区間の運賃は、ICカードで入場したか紙きっぷ(180円)で入場したかに応じて、次のとおりである。
【ICカードで入場】178円
【紙きっぷで入場】180円
すなわち、(都区内パスが電子きっぷであっても紙きっぷであっても)武蔵小金井においてICカードで入場すれば、乗り越し運賃が2円お得である。
例として、次なる経路の履歴印字を紹介する。
【往路】新橋⇒武蔵小金井
【復路】武蔵小金井⇒荻窪
出場時における精算処理については、都区内パスが電子きっぷであるか紙きっぷであるか、さらにICカードで入場したか紙きっぷ(180円)で入場したかに応じて、次のとおりである。
【都区内パスが電子きっぷ】
【ICカードで入場】
① 改札機にタッチする
② 自動精算される(178円)
③ 出場する
【紙きっぷで入場】
① 紙きっぷとICカードを精算窓口に提示する(精算機は不可)
② 窓口氏がICカードに都区内パスが存在することを確認する
③ ICカードを受け取って出場する
【都区内パスが紙きっぷ】
【ICカードで入場】
① ICカードと都区内パスを精算窓口に提示する(精算機は不可)
② 精算する(180円)
③ ICカードを受け取って出場する
【紙きっぷで入場】
① 紙きっぷと都区内パスを精算窓口に提示する(精算機は不可)
② 都区内パスを受け取って出場する
なお、乗り越し区間が幹線や地方交通線を含む場合は、差額が切り上げではなく四捨五入である。したがって、下車駅が切り捨てであるか切り上げであるか事前に調べた上で、次なる方針とすることが推奨される。
【切り捨て駅】入場前に指定席券売機で乗り越し区間の紙きっぷを購入しておく
【切り上げ駅】電車特定区間の場合と同様
以上のことは、次なる「お得なきっぷ」についても同様である。
① 都営地下鉄ワンデーパス
② 東京メトロ24時間券
③ 都営まるごときっぷ
④ 東京メトロ・都営地下鉄共通一日乗車券
⑤ 都営地下鉄・東京メトロ共通一日乗車券
⑥ 東京フリーきっぷ
⑦ のんびりホリデーSuicaパス
⑧ 休日おでかけパス
さらに、紙運賃や現金運賃がIC運賃の切り上げとなっていれば、その他の鉄道についても同様である。
なお、均一運賃制度の鉄道については、乗り越しという概念が存在しない。
【例】都電一日乗車券/世田谷線散策きっぷ
バスの「お得なきっぷ」については、乗り越した場合に全区間について現金運賃が適用され、乗り越し運賃は現金運賃である。
【例】都営バス一日乗車券
【都区内のみ】
均一運賃なので、乗り越しという概念が存在しない。
【都区外を含む】
全区間について現金運賃が適用され、乗り越し運賃は現金運賃である。
なお、多くの「お得なきっぷ」には、特典が存在する。特典を利用する場合は「お得なきっぷ」を提示する必要があるので、ICカードに記録されかつICカードの表面に何も印刷されない電子きっぷでは特典を利用することはできない。
【例】都電IC一日乗車券/都営バスIC一日乗車券
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