乗り越し運賃がお得!IC版の「お得な切符」

 2023年12月3日(日)


    鉄道各事業者は、さまざまな「お得な切符」を発売している。最近は、ICカードやスマホに記録するタイプも存在する。一般に、「お得な切符」に紙切符とIC切符の2種類が存在する場合、紙切符よりもIC切符のほうがお得であるなぜならばフリーエリア外に乗り越す場合、乗り越し運賃は、「お得な切符」が紙切符である場合よりもIC切符である場合のほうが低額なのである。これには、次なるルールが関係している。
① IC運賃紙運賃の違い
    乗り越し運賃が「IC運賃<紙運賃」の場合、当然のことながらIC切符のほうがお得である。
② 原券がIC切符であるか紙切符であるか
    原券がIC切符であれば乗り越し運賃もIC運賃であり、原券が切符であれば乗り越し運賃も運賃である。

    以下、JR東日本の都区内パスを例にして記述する。

乗車券

ご案内

① IC運賃と紙運賃の違い
    JR東日本においては、紙運賃がIC運賃の四捨五入であるか切り上げであるかについては、対象となる区間に依存する。その違いは、次のとおりである。
幹線や地方交通線を含む】四捨五入
電車特定区間と山手線内切り上げ
   すなわち、電車特定区間内において乗り越す場合、紙運賃よりもIC運賃のほうが低額である(同額の場合も存在する)。したがって、都区内パスについても、紙切符よりもIC切符のほうがお得である。しかもIC切符であれば、精算処理は改札機によって自動精算されるので、精算の手間がはぶける。
    電車特定区間のうち都区内パスのフリーエリア外である駅は、次の区間の各駅である。
【京葉線】舞浜~千葉みなと
【総武線】市川~千葉
【常磐線】松戸~取手
【東北線】川口~大宮
【埼京線】戸田公園~大宮
【中央線】吉祥寺~高尾
【武蔵野線】全区間
【青梅線】区間
【五日市線】区間
【南武線】区間
【横浜線】全区間
【鶴見線】全区間
【東海道線】川崎~大船
【根岸線】全区間
【横須賀線】武蔵小杉~久里浜
【JR相鉄直通線】羽沢横浜国大

② 原券がIC切符であるか紙切符であるか
    一般に、原券が紙切符であれば乗り越し運賃も紙運賃であり、原券がIC切符であれば乗り越し運賃もIC運賃である。このルールは、原券が「お得な切符」の場合も同様である。

    以下、具体例である。

(1) 都区内から都区外へ
    都区内パスを所持して都区内の駅から武蔵小金井(むさしこがねい)に行く場合、乗り越し区間は「西荻窪(にしおぎくぼ)⇒武蔵小金井」間である。その乗り越し運賃は、都区内パスがIC切符であるか紙切符であるかに応じて、次のとおりである。
【IC切符】178円
【紙切符】180円
    すなわち、都区内パスがIC切符であれば乗り越し運賃が2円お得である。
    その精算処理は、都区内パスがIC切符であるか紙切符であるかに応じて、次のとおりである。
IC切符】
  ① 改札機にタッチする
  ② 自動精算される(178円)
  ③ 出場する
切符】
  ① 精算窓口に都区内パスを提示する(精算機は不可)
  ② 精算する(180円)
  ③ 都区内パスを受け取って出場する

(2) 都区から都区
    都区内パスを所持して武蔵小金井から都区内の駅で下車する場合、乗り越し区間は「武蔵小金井西荻窪」間である。その区間の運賃は、ICカードで入場したか紙切符(180円)で入場したかに応じて、次のとおりである。
【ICカードで入場】178円
【紙切符で入場】180円
    すなわち、(都区内パスがIC切符であっても紙切符であっても)武蔵小金井においてICカードで入場すれば、乗り越し運賃が2円お得である。

乗り越し運賃の例

    例として、次なる経路の履歴印字を紹介する。
【往路】新橋⇒武蔵小金井
復路武蔵小金井荻窪

武蔵小金井における出入場履歴

    出場時における精算処理については、都区内パスがIC切符であるか紙切符であるか、さらにICカードで入場したか紙切符(180円)で入場したかに応じて、次のとおりである。
都区内パスがIC切符
  【ICカードで入場】
    ① 改札機にタッチする
    ② 自動精算される(178円)
    ③ 出場する
  【紙切符で入場
    ① 紙切符とICカードを精算窓口に提示する(精算機は不可)
    ② 窓口氏がICカードに都区内パスが存在することを確認する
    ③ ICカードを受け取って出場する
都区内パスが切符
  【ICカードで入場】
    ① ICカードと都区内パスを精算窓口に提示する(精算機は不可)
    ② 精算する(180円)
    ③ ICカードを受け取って出場する
  【紙切符で入場
    ① 紙切符と都区内パスを精算窓口に提示する(精算機は不可)
    ② 都区内パスを受け取って出場する

    なお、乗り越し区間が幹線や地方交通線を含む場合は、差額が切り上げではなく四捨五入である。したがって、下車駅が切り捨てであるか切り上げであるか事前に調べた上で、次なる方針とすることが推奨される。
【切り捨て駅】入場前に指定席券売機で乗り越し区間の紙切符を購入しておく
【切り上げ駅】電車特定区間の場合と同様

    以上のことは、次なる「お得な切符」についても同様である。
① 都営地下鉄ワンデーパス
② 東京メトロ24時間券
③ 都営まるごときっぷ
④ 東京メトロ都営地下鉄共通一日乗車券
⑤ 都営地下鉄・東京メトロ共通一日乗車券
⑥ 東京フリーきっぷ
⑦ のんびりホリデーSuicaパス
⑧ 休日おでかけパス
    さらに、紙運賃や現金運賃がIC運賃の切り上げとなっていれば、その他の鉄道についても同様である。
    なお、均一運賃制度の鉄道については、乗り越しという概念が存在しない。
【例】都電一日乗車券/世田谷線散策きっぷ

    バスの「お得な切符」については、乗り越した場合に全区間について現金運賃が適用され、乗り越し運賃は現金運賃である
【例】都営バス一日乗車券
  【都区内のみ
    均一運賃なので、乗り越しという概念が存在しない。
  【都区外を含む
    全区間について現金運賃が適用され、乗り越し運賃は現金運賃である。

    なお、多くの「お得な切符」には、特典が存在する。特典を利用する場合は「お得な切符」を提示する必要があるので、ICカードに記録されかつICカードの表面に何も印刷されないIC切符では特典を利用することはできない。
都電IC一日乗車券/都営バスIC一日乗車券