連絡乗車券にすれば可能!私鉄線内での途中下車

2023年2月5日(日)


    多くの私鉄は、キロ程が100km超であっても途中下車前途無効である。例えば、東武鉄道では、「浅草~東武日光」間のキロ程は100km超であるが、途中下車前途無効である。
    しかし、キロ程が100km超だけでなく100km以下であっても、それを有効にできる場合がある。それが連絡乗車券である。

    多くの私鉄については、JRと接続している駅を経由する場合に、JRの片道乗車券と私鉄の片道乗車券を合わせて1枚の乗車券として発券することができる。これを連絡乗車券と言う。例えば、「東京山手(やまのて)線内~伊豆急下田(しもだ)」間の乗車券を1枚の「
きっぷ」として発券することができる。


【例】

    次なる画像は、「柏(かしわ)⇒伊東(いとう)」間と「伊東⇒伊豆急下田(しもだ)」間を1枚のきっぷにした連絡乗車券である。「えきねっと」では「上野⇒東京」間のみを新幹線経由にするという処置を施すことができないので、とりあえず在来線経由で申し込んで、指定席券売機で発券したのちに「みどりの窓口」で変更した例である。

変更前

    「下車前途無効」という表記が存在するが、伊東だけは下車前途有効である。

(変更後)

    「柏⇒伊豆急下田」間の営業キロは100km超であり、経由欄に「新幹線」という表記が存在する。したがって、途中下車前途有効であり、「下車前途無効」という表記が存在しない。このきっぷは、JR区間だけでなく伊豆急区間についても途中下車前途有効である。

    これは連絡運輸という制度であり、旅客(りょかく)営業規則とは別に、旅客連絡運輸規則という運送約款(やっかん)によって定められている。連絡乗車券では、運賃と料金は単に合算されるだけであるが、次なる利点がある。
(1)  途中下車
    
次なる条件を満たす場合、全区間について途中下車前途有効である。
① 全区間の営業キロが100km超である
② JR区間が大都市近郊区間でない
(2)  有効期間
    両事業者合わせた営業キロによっては、有効期間が延びる可能性がある。

    例えば、上図の「東京山手線内~伊豆急下田」間については次のとおりである。
(1)  営業キロ
全区間の営業キロは100km超である。
(2)  JR線の経由線路
① 在来線経由
     JR線の全区間を在来線経由にした場合、「東京山手線内~伊東」間は東京近郊区間であるので、全区間について(伊東駅を除き)途中下車前途無効である。
② 新幹線経由
     JR線に新幹線経由を含めた場合、「東京山手線内~伊東」間は東京近郊区間ではないので、全区間について途中下車前途有効である。

    なお、乗車券に記載された経由が在来線経由であっても新幹線経由であっても、選択乗車ルールにより、そのいずれを利用してもよい。

    次に、「新宿~三島」間について次の2案を考えてみたい。
【A案
普通乗車券2枚
    新宿~(小田急)~小田原~(JR)~三島
【B案】普通乗車券1枚
    東京山手線内~(JR)~三島


    この2案においては、小田急の運賃がかなり安いので、B案よりもA案のほうが格段に安い。ここで、A案の運賃は、普通乗車券2枚でも連絡乗車券1枚でも同じであるが、連絡乗車券の場合は全区間において途中下車前途有効である。
    なお、A案については、「新宿~小田原」間をIC運賃にすれば、紙運賃(普通乗車券2枚)よりもわずかに安価である。

   また、連絡運輸の中のひとつの形態であるが、「JR~私鉄~JR」や「私鉄A~JR~私鉄A」という場合は通過連絡運輸と言う。これも1枚の連絡乗車券にすることができる。「私鉄A~私鉄B~私鉄C」という3事業者連絡もありうる。

    連絡運輸も通過連絡運輸も、鉄道会社によって適用される区域が限定されているので注意が必要である。
    例えば、東武スカイツリーラインとJR線との連絡乗車券が発売可能となる発着駅は、次のとおりである。
(1)東武側
    接続駅別に異なる。
【例1】春日部(かすかべ)
    ①大宮接続可
    ②伊勢崎(いせさき)接続可
【例2】越谷(こしがや)
    ①大宮接続不可
    ②伊勢崎(いせさき)接続可
(2)JR側
    ①東京近郊区間の各駅(但し次のとおり)
    【
中央本線甲府以東
    常磐(じょうばん)線】日立(ひたち)以南
    ②本庄早稲田(ほんじょうわせだ)駅
    ③上毛(じょうもう)高原駅
    (②③はJR側の発売のみ)

    すなわち、JRの駅が東武鉄道の駅との連絡乗車券を発売する場合は、全区間のキロ程が100km超であれば、新幹線経由にすることによって、途中下車前途有効である。
    しかし、東武鉄道の駅がJRの駅との連絡乗車券を発売する場合は、全区間のキロ程が100km超であっても、新幹線経由にすることができないので、途中下車前途無効である。

    連絡乗車券は「きっぷの絶滅危惧種」とも言われている。JR側が発売する場合は機械で印刷された「きっぷ」になることが多いが、私鉄側が発売する場合は補充券による手書きの「きっぷ」になることが多い。
    私も機会があれば利用してみたいと思いつつも、その機会にまだ遭遇していない。

    連絡乗車券については、定期券ではよく目にするが、普通乗車券ではめったに目にすることはない。それは、次なる理由によると推察される。
①  利用者側の都合
    「お得なきっぷ」を利用したほうが安価であることが多い。
②  鉄道会社側の都合
    発券する際に、連絡運輸や通過連絡運輸に関する規則を調べる必要が生じる

    一般に連絡乗車券については、利用者への周知が消極的であるが、近距離の連絡乗車券については乗継割引が適用されている(こちら)こともあって、券売機上方の運賃表に掲示されている。

    なお、この記事において、私鉄とは、第三セクターと公営交通を含むものとする。


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