【原則】両線を同一線とみなす
【例外】特定の区間についてのみ別線とする
この特定の区間というのは新幹線単独駅を挟む区間が該当し、該当区間が具体的に定められている。
<ケース1>
次なる区間は、新在並行区間の同一線例である。
【発駅】大宮
【着駅】行田(ぎょうだ)
【経由】熊谷(くまがや)
新在並行区間の同一線例
この経路については、1枚の片道乗車券とすることはできない。
一般に、乗車券については、発駅や一度経由した駅に再び戻るとそこで打ち切るという規則がある。この例の場合、見た目には片道乗車券にできそうであるが、「大宮⇒熊谷」間については、券面の経由欄に「新幹線」と書かれていようが「高崎線」と書かれていようが、いずれの区間の乗車券としてもよいことになっている。その結果、例え新幹線で「大宮⇒熊谷」間を利用したとしても、行田を経由(通過)していることと同じことなので、熊谷から行田を目指す時点で重複することになるのである。
<ケース2>
次なる区間は、新在並行区間の別線例である。
【発駅】高崎
【着駅】高崎問屋町(とんやまち)
【経由】上毛(じょうもう)高原/越後湯沢(えちごゆざわ)
この経路については、1枚の片道乗車券とすることができる。その営業キロは100km超であり、かつ東京近郊区間外の路線(新幹線)を含んでいる。したがって途中下車前途有効である。すなわち、越後湯沢で途中下車したのちに、再び越後湯沢で乗車して旅行を継続することができる。
<ケース3>
ここで、話が少しそれるが、JR乗車券の場合、往復乗車券や連続乗車券とするよりも、経路を工夫して片道乗車券にして目的地で途中下車したほうが安価となるケースが多く、出発駅と到着駅を同一にするということは多用されるアイデアである。これは、一筆書き「きっぷ」のなかでも「0(れい)の字乗車券」と言われていて、1枚の片道乗車券とすることができる。
次なる区間は、「0の字乗車券」の例である。
【発駅】小山(おやま)
【着駅】小山
【経由】郡山(こおりやま)/いわき/友部(ともべ)
この経路については、1枚の片道乗車券とすることができる。その営業キロは100km超であり、かつ東京近郊区間外の駅を含んでいる。したがって途中下車前途有効である。
「小山⇒郡山」間については、券面の経由欄に「新幹線」と書かれていようが「東北本線」と書かれていようが、いずれの区間の乗車券としてもよい。なぜならば、「小山⇒郡山」間は、新在並行区間を同一線とみなすという規則に該当する区間だからである。
<ケース4>
ケース2と3を眺めると、ケース2の到着駅を高崎問屋町でなく高崎として「0の字乗車券」にすることができるように感じられる。すなわち、次のとおりである。
【発駅】高崎
【着駅】高崎
【経由】上毛高原/越後湯沢/高崎問屋町
この経路については、1枚の片道乗車券とすることはできない。
一般に、ケース2の「別線」には例外があって、発着駅としては対象とする新在並行区間の「両端の駅を除く」という但し書きが明記されている。すなわち、両端の駅の間にある駅を発着駅とすることは可であるが、両端の駅を発着駅とすることは不可なのである。この例の場合、次のとおりである。
【両端の駅】高崎/越後湯沢
【両端の駅の間にある駅】高崎問屋町から越後中里(えちごなかざと)まで/上毛高原
ここで、「両端の駅」に越後湯沢が含まれている理由は、高崎発ではなく越後湯沢発も想定して表現しているからである。
【例】越後湯沢⇒上毛高原⇒高崎⇒高崎問屋町⇒越後湯沢
また、着駅ではなく発着駅と表現している理由は、逆経路も想定して表現しているからである。
【例】高崎問屋町⇒越後湯沢⇒上毛高原⇒高崎
この経路の乗車券については、途中で分割するしかない。この例に示す区間「高崎⇒高崎」における分割候補駅は、次のとおりである。
【分割候補駅】上毛高原から高崎問屋町まで
分割駅によっては営業キロが100km未満となる場合があるので、途中駅で下車するのであれば下車する駅で分割しなければならない。目的地が越後湯沢であれば、越後湯沢で分割しないと越後湯沢で下車した際に「きっぷ」が手元に戻らない。
その分割された区間については、2枚の片道乗車券でもよいし、ひと組の連続乗車券でもよい。
ここで、乗換案内ソフトがケース4の経路をどのように処理するか気になって、いくつかの乗換案内ソフトについて確かめてみた。結果は次のとおりである。
<えきねっと(Windows版)>
このソフトは、「0の字乗車券」を認めていない。検索すると「乗車駅と降車駅は異なる駅を入力してください。」というエラーメッセージになる(詳細はこちら)。したがって、「0の字乗車券」ではなく、次なる「6の字乗車券」で確認した。
【結果】検索すると、次なるエラーメッセージになった。
「ご指定の条件を満たす経路がありませんでした。条件を変えて再度検索してください。」
容認しないことは正しい処理であるが、エラーメッセージの文言(もんごん)は不適切である。
なお、このソフトは、ケース3の発駅である小山(おやま)を間々田(ままだ)に変更した「6の字乗車券」についても同じエラーメッセージであったので、「0の字乗車券」であろうが「6の字乗車券」であろうが、重複駅を伴う乗車券については検索対象としないという方針であるものと推察される。
<Y!乗換案内>
「出発地と目的地が同じです。」
したがって、「0の字乗車券」ではなく、上述の「6の字乗車券」で確認した。
【結果】「0の字乗車券」として算出した。これは誤った処理である。
<駅すぱあと for WEB(Windows版)>
このソフトは、「0の字乗車券」を認めている。
【結果】「0の字乗車券」として算出した。これは誤った処理である。
<ナビタイム>
このアプリも、「0の字乗車券」を認めている。
【結果】「0の字乗車券」として算出せずに、途中駅で分割された2件の片道乗車券として算出した。これは正しい処理である。分割駅は越後湯沢であった。
Y!乗換案内と「駅すぱあと for WEB」に、一筆書き「きっぷ」とすることはできない旨を進言してみた。
<進言主旨>
次なる区間を設定した。
【高崎⇒上毛高原⇒越後湯沢(⇒高崎】
この経路で検索した結果、一筆書き「きっぷ」として運賃計算された。2区間の運賃の和とすべきではないか。
いずれのソフト(アプリ)も、問い合わせについて回答しないことになっている。
<結果>
従来のままである(2022年4月21日現在)。
<関連記事>