報道番組が人出の多さについて報道する際に、定番となっている風景がある。東京都内の場合では、浅草や銀座がよく紹介される。その際に、背景に映し出される映像としては、浅草の場合は雷門(かみなりもん)の提灯(ちょうちん)であり、銀座の場合は和光の時計である。
「ゴジラ」映画のシリーズ第1作では、和光(わこう)を始めとする銀座の多くのビルが破壊された。第2作以降では、ビル側から制作側に「ぜひ破壊してほしい」旨の要請が寄せられた。
あの和光という企業はセイコーグループの一員であり、その和光の時計はセイコー製である。セイコーと言えば、私の少年時代においては、精工舎と名乗っていた。テレビでは、「精工舎が正午をお知らせいたします」と言っていた。その和光の時計は、毎時0分に鐘(かね)を鳴らすことで有名である。
そんな想いにひたっていたら、ある文学作品のパロディが頭に浮かんだ。
<平気物語>
銀座精工舎の鐘の声、諸般の事情の響きあり。
ゴジラけちらすネオンの色、夜の誘(さそ)いに断りをあらは(わ)す。
おごれる人にも久しく会わず、「ただ酒(ざけ)」の夜(よ)は夢のごとし。
高き物価につい使いすぎ、ふところは風前のともしびに同じ。
筆不精(ふでぶしょう)
<平家物語>(原文)
祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声、諸行(しょぎょう)無常の響きあり。
娑羅双樹(しゃらそうじゅ)の花の色、盛者(しょうじゃ)必衰の理(ことわり)をあらは(わ)す。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜(よ)の夢のごとし。
猛(たけ)き者もつひ(い)には滅びぬ、ひとへ(え)に風の前の塵(ちり)に同じ。
作者不詳
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