まず、本記事における用語について定義したい。「ropeway」のカタカナ表記については、次なる4通りが存在する。
① ロープウエー
② ロープウェー
③ ロープウエイ
④ ロープウェイ
国内の固有名詞においては④を採用している施設が最も多いが、本記事においては、(NHKの内規を準用して)次なる方針で記述する。
【普通名詞】ロープウエーとする
【固有名詞】固有名詞にしたがう
なお、ロープウエーとリフトを合わせて「索道(さくどう)」という。
本題に移る。ロープウエーについて調べていて、不思議な記事に遭遇した。
(1) 自走式
ウィキペディア「索道」(さくどう)において、「自走式ロープウェイ」については「自走式モノレール」という呼称が適切であるという主旨の記述が存在する。その根拠は、「規制される法令が運輸省令による索道規則ではなく軌道法である」という主旨である。
しかし、モノレールが自走式であるのはあたりまえのことであり、「自走式モノレール」という表記よりも単に「モノレール」という表記のほうがよいと感じられる。
(2) ロープウエーとゴンドラリフト
ウィキペディア「索道」において、ロープウエーとゴンドラリフトの相違点について言及されている。しかし、明確な違いを示しているとは言い難い。
索道は、普通索道と特殊索道に分類される。普通索道の中で、交走式がロープウエーであり循環式がゴンドラリフトであるというネット記事が存在する。確かにその傾向は強いが、例外は多く存在する。
国内の索道において、循環式ではあるが、「ロープウェイ」等の呼称を用いていて「ゴンドラリフト」の呼称を用いていない例は、次のとおりである(廃休路線を含む)。
① のぼりべつクマ牧場ロープウェイ
② 蔵王(ざおう)ロープウェイ
山麓線と山頂線が直列している。 山麓線は交走式であるが、山頂線は循環式である。両者を合わせて「蔵王ロープウェイ」と称している。
③ あだたら山(やま)ロープウェイ(福島県)
④ Zippar(ジッパー)福島試験線の「自走式ロープウェイ」(福島県)
「自走式ロープウェイ」については、ややこしい状況が存在する(詳細は前述)。
⑤ 磐梯山(ばんだいさん)ロープウェイ(福島県)
⑥ グランデコ裏磐梯(うらばんだい)ロープウェイ(福島県)
⑦ 谷川岳(たにがわだけ)ロープウェイ(群馬県)
⑧ 日光白根山(しらねさん)ロープウェイ(群馬県)
⑨ 白根火山(しらねかざん)ロープウェイ(群馬県)
⑩ 御岳(おんたけ)ロープウェイ(長野県)
⑪ 伊豆(いず)パノラマパークロープウェイ(静岡県)
⑫ 大阪万博(ばんぱく)の「レインボーロープウェイ」(大阪府)
⑬ 神戸布引(ぬのびき)ロープウェイ(兵庫県)
⑭ 京山(きょうやま)ロープウェー(岡山県)
⑮ 湯原(ゆばら)温泉ロープウェイ(岡山県)
⑯ 宮島(みやじま)ロープウェー(広島県)
紅葉谷(もみじだに)線と獅子岩(ししいわ)線が直列している。 紅葉谷線は循環式であるが、獅子岩線は交走式である。両者を合わせて「宮島ロープウェー」と称している。
また、搬器が1台だけという索道も存在する。搬器が1両なので、交走式とは言えない。循環しているわけでもないので、循環式とも言えない。いわゆる単線単行方式である。単線単行方式は、貨物専用の索道として多く存在する。国内における貨物専用を除いた単線単行方式の索道は、次のとおりである。
① 塩原東京ホテルの施設間移動用索道(栃木県)
② 東急百貨店の「空中ケーブルカー」(東京都)
③ 晴遊閣大和屋(せいゆうかくやまとや)ホテルの「夢のゴンドラ」(神奈川県)
④ 有田観光ホテルの「宇宙アポロ風呂」(和歌山県)
⑤ 研創(けんそう)の従業員輸送用索道(広島県)
(3) ゴンドラリフトとリフト
ウィキペディア「索道」では、ゴンドラリフトとリフトの相違点についても言及している。しかし、明確な違いを示しているとは言い難い。
ネットに存在する記事によると、両者の違いは次のとおりである。
【ゴンドラリフト】搬器が閉鎖的な箱型
【リフト】開放的な椅子型
ウィキペディア「チェアリフト」において、自動循環式について次なる主旨の記述が存在する。
【ゴンドラリフト】普通索道
【デタッチャブルリフト】特殊索道
すなわち、ウィキペディア「索道」と同じく、閉鎖的であればゴンドラリフトであり、開放的であればリフトであるという考えである。
しかし、その中間的なものが存在しうる。現実に存在するか否かは別問題として、搬器が閉鎖的でも開放的でもない容姿が考えられるのである。次なる例は、ゴンドラリフトであろうか、それともリフトであろうか。
① 屋根と囲いはあるが、床(ゆか)はない。
② 屋根はないが、囲いと床はある。
③ 屋根も囲いも床もあるが、3者が合体していない。
したがって、搬器が閉鎖的か開放的かという考えは、定義として不十分である。
また、定員で区別するという記事も存在し、次のとおりである。
【ゴンドラリフト】複数定員
【リフト】1名定員
確かにその傾向は強いが、明確な違いを示しているとは言い難い。なぜならば、2名定員のペアリフトや4名定員のクワッドリフトが存在するが、それをゴンドラリフトと称している事例を見つけることはできないからである。
