「◯◯形」や「◯◯型」という言葉を目にすると、見過ごすことができない。「形」と「型」は共通の音読み「ケイ」と訓読み「かた」があり、かつ意味も似ているのでややこしい。
一般に、「形」と「型」の使い分けは、次のとおりである。
「形」・・・姿や形(かたち)の場合(shape、figure)
例:丸形、手形、空手の形(かた)、ペン形(がた)ライト、ヒト形(がた)ロボット
「型」
①分類を表す場合(type)
【例】新型、大型、血液型
②元になる物・様式の場合(model)
【例】ひな型、型紙、芝居の型
「大型」「小型」については、姿形(すがたかたち)を指(さ)しているので「大形」「小形」が適切であるような気もするが、「大型」「小型」の区別は、通常は大きさ以外で厳密に定められている。例えば、「大型自動車」は「小型自動車」よりも大きいが、その区別は寸法で定められているのではなく、重量、積載量、乗車定員で定められている。すなわち分類を表す場合は「型」なのである。鉄道運賃の「大人」と「小人」の区別は年齢で区別されていて、確かに身長や体重も異なるが、身長や体重は区別の指標ではない。それと同じことである。
なお、「大型」「小型」という表現が浸透したために、単に大きさで区別する場合も「大形」「小形」ではなく「大型」「小型」が使用されることが多くなっている。
「形」と「型」の両方の表現が存在する熟語もあり、それを見ると両者の相違点がよく理解できる。
①足がた
【足形】足跡の形
【足型】靴や足袋(たび)の型
②髪がた
【髪形】頭髪の形(かたち)(例:髪形が崩れる)
【髪型】リーゼントやスポーツ刈りなどいわゆるヘアスタイルのこと
③歯がた
【歯形】歯で噛(か)んだ跡(あと)
【歯型】入れ歯を作るための型(かた)
上信(じょうしん)電鉄の高崎駅に、廃車にした電車を利用した待合(まちあい)室がある。脇にある案内看板では「電車型待合室」と表現している。
これは、電車の形をした待合室ということなので「電車形」でなければならないように感じられる。もし、電車を転用したのではなく、建材を使って電車のような外観の待合室を製作したということであれば、間違いなく「電車形」である。ところが、上信電鉄の場合は、電車を転用して待合室にしたのであり、その場合は「電車型」が正しいのである。